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よいこのための 世尊釈迦牟尼如来応供等正覚者 ものがたり

(namo buddhaaya)

[前] はじめに

むちりんだ、せそん を おまもりする

真理を体得なされた世尊は、心ゆくまでボダイ樹の下におられたのち、 龍たちの王であるムチリンダの宮殿があるところにおいでになりました。 そして世尊は、ある木の下におすわりになられ、再び暝想にお入りに なられました。

そのとき、ちょうどムクムクと雨雲が湧いてきまして、 ひと嵐きそうな気配です。

「うーむ。こりゃ嵐になるな」
「御意にござりますな」
「そういえば、さっき城下に来ておられた、あの出家の方... 何といったっけ」
「あの方ですか。たしかガウタマ様と...」
「おう、そうそう。あの方はどうなさるのかな。この嵐で」
「報告によると、町はずれの、とある樹の下で暝想に入られているとの ことにござります」
「うーむ。ノンビリされたものだなあ。嵐が来るというのに」

「...」
「ん、どうした?」
「おそれながら申し上げます。 修業の方をお守りするのは王たるものの義務にござりますれば、 あの方を嵐からお守りになられるべきかと」
「たしかに一理ある。よし、誰か兵をやってあの方をお守りさせろ」

「...」
「ん、どうした?」
「おそれながら申し上げます。 あのお方は特別な方にござりますれば、余の者を遣わしてもダメで ございます。殿自らおいでなされませ」
「なんだ。突然、徐庶みたいなことを言いだしおって」
「さもなくば、きっと後世に禍根を残すことにございましょう」
「ほう。どういった具合にか」
「後の世に『あやつは世尊をお守りにならなかった悪業者』という噂が 定着する恐れ、なきにしもあらず、と」
「うーん。たしかにダイヴァダッタの例もあるしなー。 あいつらならやりかねん」
かくて意を決した龍王は、町はずれの世尊のもとに参上いたします。 空はどんどん暗くなってきて、かつ風も勢いを増しておりまして、 いつ雨粒が落ちてきてもおかしくない気配です。
「あ、いたいた。 こんな天気だというのに、ノンビリ暝想なんかしてやがる。 いい気なもんだ」
世尊を目前にした王は、世尊に呼びかけます。
「修業の方。お目をお開けください。もうじき嵐になります」
しかし暝想にお入りになられている世尊は、 龍王の呼びかけに対しても微動だになさいません。
「ううむ、困ったなあ。完全にイっちゃってるよ... しょーがないなあ」
困った龍王は「失礼」とひとこと声を発すると、 世尊をトグロ巻きにしました。 龍王の身体は長かったため、世尊を7周してしまいました。
「殿、これはいったい」
「しかたがあるまい。もう嵐じゃ」
ちょうどそのとき、龍王が世尊を保護するのを待っていたかのように、 大雨が降りだしました。
「ワシは嵐が止むまでこうして修業の方をお守りいたす。 ワシがおらぬ間、城のことは頼んだぞ」
「おお、さすが我らが殿様。わかりました、おまかせください」
かくして龍王は、嵐のつづいた一週間のあいだ、 自分の身をていして世尊を嵐からお守りしつづけました。

嵐は一週間続きました。 嵐が過ぎ去った後、 龍王はトグロを解き、身支度をととのえてから、 世尊の御前に立ちました。

「修業の方、どこにもお怪我はございませんね」
「うむ」
「...」
「...」
「...」
「まだ何か?」
「い、いえ。それでは失礼いたします」
すこしムッとして世尊のもとを去る龍王です。
「殿様、よかったですね。きっといいことがありますよ」
「なぜだ。ワシは今、ハッキリ言ってムカついとるぞ」
「修業の方には、修業で培った善のオーラみたいなのが身体じゅうから 発散されていると聞きます。殿様はそのオーラを七日ものあいだ 全身で吸収され続けたわけですから」
「うーん。そーかなー。なんかダマされてるような気がするぞ」
「まあまあ」
いつしか空には雲ひとつなくなり、 あたりは何事もなかったかのように、 暑い太陽が大地を焦がしている、いつもの風景にもどっています。





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