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「たとえばこんなインターネット活用術」(2002/9)


[前] 単語の価値はどうよ

夜も眠れない?


From: G_______@___.com
Date: Mon, 1 Mar 1999 00:08:18 EST
Subject: Re: Hi in response to your words posting

i have the mclt.jpg's  and i am looking for more archives containing those
type of jpg's
図 8: 海外からの反応 (1)

ここから話を変えよう。 ぼくが作った「単語集」の社会との関係についてだ。 ぼくの「単語集」へのアクセス数については、すでに 表 2 に示したとおりだ。 月ごとにかなり大幅な変動があるため、 けっこう見づらいとは思うけど、 たかが単語を羅列しただけのページに、 一月10万以上、一日当りで約3000件のアクセスがあるというのは、 ぼくにとって予想外のアクセスの多さだった。 1997 年の終わりから 1998 年にかけての頃だろうか、 ぼくは徐々に怖くなってきた。だって‥ ぼくの「単語集」に並んでる単語は、かなり早い時期から チャイルドポルノ関連の単語ばかりになってしまってる訳じゃないか。 だからまずぼくは、公安当局に危険分子として マークされないかということが不安になってきた。 実際、ぼくのところには、図 8 のような、 ぼくの本来の意図をまったく無視したメール(以下、 個人が特定できそうなメールの記述については、相場の判断で 伏せ字にしてあります。)を送りつけるやつが 時々いたし、いつか誰かがとんだ的外れな攻撃をしてきても 全くおかしくない状況であったからだ。 また、このサイトの存在に気付いている人の数はそんなに多くはないものの、 それなりのアクセス数を出しているページだったことも、 ぼくの不安を煽る要素となった。 でも一方では、怖いもの見たさも手伝って、 この「単語集」のページをつぶそうなどとは 考えたこともなかった。


you are sick, to bad you dont know it yourself....
図 9: 海外からの反応 (2)

 公安といえば、 当時は「エシュロン」に代表されるような、公的機関による 電子情報の大規模な傍受や収集活動が人々の話題となりはじめていた。 そして、おそらく彼らは、 「自分たちにとって有用な情報を選別する基準として、 特定の言葉が含まれている通信に早い時期から注目していたと みられている」[2,p.43]。 ということで、このページが、日本に限らず、どこかの 公安当局に目をつけられる可能性も非常に高そうに思っていた。 ただ、ぼくの心の拠所としては、やはり、 ぼくのページには実際にはそんなヤバいコンテンツは存在して いないことと、 あと、各国の公安当局もそんなに暇でもないだろうから、

  • 単なる単語の羅列だけでは エシュロン等には引っかからないだろう。
と勝手に思ってしまうことくらいだった。 ぼくのこの考えはそれなりに正しかったようで、 「ダンカン・キャンベル氏は‥『‥自動解析作業を行う際には 単語のつながり、文章全体の意味なども当然、検討されるから、 無意味に単語を並べたような文章はむしろ真っ先に(抽象対象から) はじき出す。‥』と、‥みている」[2,p.47] そうなので、やはり、ぼくのページなんか、 まったく問題外であったんじゃないかと思っている。


I wish I could read Japanese. Is this a study of www useage based on words? Brilliant! Looks like you're determining which word combinations are most attractive to pedophiles, and which search engines are used. Fascinating.
図 10: 海外からの反応 (3)

 また、ぼくが恐れたのは実は公安当局よりも サイバーエンジェルス等のような市民レベルのボランティア活動だった。 公安当局は、何だかんだ言っても、そこに実際に ヤバい素材がない限り、基本的には何もできないし、 何をしようとも考えないだろう。でも、ボランティア団体の場合、 彼らの気分を害したというだけの理由で難癖をつけられるかもしれない、 という危惧は常に持っていた。 ただ、やっぱりこちらも「単語集」にはアダルト関連の素材が 一切なかったことが幸いした(アクセスログを見ると、ときどき、何とかしてアダルト マテリアルを探し当てようと努力した跡を見かけることがある。) のか、彼らに目をつけられることはあったかもしれないけど、 それ以上の何か目にみえる具体的な事態に発展することはなく、 警告に相当するような類のものは一度も来ることがなかった。 来てもせいぜい図 9 のような類の、 まとはずれな意見が数回寄せられただけだった。 また、どこかのロリータ系リンク集から、 「日本のロリータ系のサイト」のような感じでリンクが張られていた こともあった。これらの経験を通じて、ぼくは

  • 説明を全部日本語で書くと、外国人は説明を読んでくれない
ということを痛感したものだ。 ただし、海外の人の中にも、 ぼくの意図をそれなりに理解したうえで反応してくれる人もいた。 図 10 がそれだ。 ぼくが pedophile に関する情報を集めようとしていた のではないことがちゃんと 理解されていたのかが若干気になるところではあるけれど、 とりあえず、外国人で、ぼくの意図を理解してくれた人がいることは嬉しかった。 また、日本国内からのメールについては、さすがに彼らは ぼくが書いた文章も読んでから連絡してくれるようで、 的外れなメールをぼくによこす人はほとんどいなかった。 また、図 11 のような、新たな提案をいただく こともできた(なんだ、所詮学部生じゃん、という見方もあるとは 思いますが‥)し、 結局実現しなかったけど、 「単語集」絡みで雑誌に記事を書かないかという原稿依頼が 来たりするなど、 かなり好意的な反応ばかりだったのは嬉しかった。


From: H_____ T_______ <y___@_____.co.jp>
Date: Sat, 2 Jan 99 09:57:00 +0900

はじめまして。
私は________大学4年生で、コンピュータのシステム開発の
会社でアルバイトをしている____と申します。

私は同一ページの多重登録や強制リンクなどのアダルトサイトに
よくある広告料稼ぎ目的の様々な方法によるインターネットや
サーチエンジンの使い勝手の低下にうんざりしている者です。

広告料を稼ぐために強制リンクしてリンクカウントを稼ぐなら、
不可視のフレームを使えばいいし、多重登録によってサーチ
エンジンが使い物にならなくなれば逆に宣伝効果の低下を招く
と考え、その様な方法による使い勝手の低下の実態を調べる
ためにアダルトサイトの強制リンクと任意リンクの実態を
調べています。

単語集によるアクセス統計は面白いと思います。
できればキーワードをカテゴリー別にディレクトリを分ければ
もっと面白い統計が採れると思います。

別に研究目的でなければ失礼しました。
図 11: 国内からの反応 (1)

 ドメイン別のアクセス数の年ごとの推移を、 表 4 に示す。 この表では、トップドメインごとの分類をおこなってみたが、 これはすなわち、 .com, .net 等の特別なやつを除けば、 基本的には、アメリカ以外の地域における、 国別のアクセス数一覧となる。 最初にこの結果を見て、ぼくは背筋が寒くなった。 ドイツ。ドイツ連邦共和国からのアクセス数が非常に多かったのだ。 ドイツのアクセス順位はつねに4位であり、 これはノルウェイ(no)や英国(uk)と同じ程度の アクセスのように思ってしまいそうになるが、話はそんな簡単ではない。 1997年においては、 アクセス順位のみならず、アクセス回数においても、 日本(jp)とかなりの僅差になっている。 また 1998 年以降についても、日本にはアクセス数でかなり 差をつけられるようになってしまうけど、 でも英国などの 5 位の国と比較すると、 つねにアクセス数で倍以上の差をつけている。 そんなところから考えてみると、ドイツは、 この「単語集」に関しては、かなり熱心な国であるといえそうだ。

そんなことを考えながらぼくは思った。 ドイツでWWWでそういったページを探す人たちって、 どういう人たちなんだろうか。 そんなことを考えたぼくの頭の中は、不謹慎なことだとは思うんだけど、 第二次世界大戦のときのドイツのイメージでいっぱいになってしまった。 ‥‥そんな彼らが、ぼくのサイトを見つけてアクセスして 舌うちしてる様子を想像してみよう。それも、 一日10回以上も。


(Image)

表 4: ドメイン別のアクセス数



 ぼくの被害妄想は逞しかった。 いつか、あのページにおけるぼくの意図に気づいた誰かが、 逆上してぼくを刺しに来るのではないか、 という気がして、いてもたってもいられなくなった。 そんな気がするようになってから しばらくの間、ぼくは歩く時にはつねに背後を気にするようになった。 幸いなことに、ぼくのそんな恐れもやっぱり単なる杞憂にすぎなかったようで、 今までのところ、ぼくの前にそんな暴漢は現れたことはなかったし、 ぼくもいつのまにか襲撃されるかもしれないという不安そのものを すっかり忘れてしまっていた。

 まあ、そんな妄想はさておき、この表 4 からは、 それなりに面白いことが見て取れるかもしれない。 たとえば、さっきも言ったことだけど、 ドイツ(de) からのアクセス比率は 1997 年に最大に達しており、 ほとんど日本(jp)からのアクセス数を抜くかのごとき勢いだったけど、 その後のアクセス数は伸び悩んでいる。このドイツの伸び悩みの 主な原因になっているのが、おそらく 1999 年以降の 日本(jp)の快進撃ということなんだろう。 では、なんで日本がこの時期にこれほど快進撃をしたかというと、 日本で「インターネット」が本当に一般の人にまで浸透した 時期というのが、まさにこの時期に当たるのかな、なんて感じたりする。

 一部の研究機関に限定されたところから始まった 日本のインターネットの歴史においては、 初期の頃には、ネットワークは多分に研究目的で使われていたん じゃないかと思う。無論、ネットワークが使えるようになった かなり早い時期から、アダルト関連のデータもネットワーク上を 流れることには流れていた。でも 10 年くらい前だと、 1MB 程度のデータを転送しようと思ったら、それだけで 何時間もかかってもおかしくないような時代だった。 そんな感じで、アクセスできる場所と、 ネットワークのデータ転送速度の両方の問題から、 アダルトコンテンツに対するユーザの欲望が インターネットに直接ぶつけられることはあまりなかった (ぶつけられても、ユーザを満足させるにはほど遠かったと思う)。 でも、電話回線さえ来ていればどの家庭からも インターネットに接続できるようになり、また、 データの転送速度もそれなりに十分な速度が出るようになり、 人々の欲望を満足させることが可能になってきた時期が まさにこの 1999 年であったということを、 日本のドメインからのアクセスがこの時期に急増したことは 示しているのかもしれない。

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