[前] 母子の最後の会話 |
摩訶摩耶は阿難に聞きます。「我が子悉達は、滅度に際して 何か言い残したことはあるのですか」と。
阿難は申します[b17]。 「世尊は夜の中ほど、弟子たちに説法なされました。また十二部あるお経を 尊者摩訶迦葉に託されました。 私も助力を命ぜられました」
さらに問います。 「おまえは以前から仏の侍者として世尊の説法を聞いてきました。 如来の正法はいつまで保たれるのですか[b21]」
阿難は涙しながら答えます。「私が以前聞いた、将来の法滅についての 世尊の説法は以下のとおりです --- 仏が涅槃された後、 摩訶迦葉が阿難とともに法蔵の結集をおこないます[b24]。 それが完了したのち、摩訶迦葉は狼跡山にて入滅します。 私もやがて般涅槃します。 正法は優婆掬多に受け継がれます。 富樓那のように説法し、法を広め、人々を導きます。 また阿輸迦王に仏法への堅固な信仰をもたせます[b28]。 王は、仏舎利を分骨して 八万四千もの塔ができます」
「二百年後。尸羅難陀という比丘の説法により、 閻浮提にて十二億人が信仰します」
「三百年後、青蓮花眼という比丘の説法により、 半億人が信仰します」[1013c02]
「四百年後、牛口という比丘の説法により、 一万人が信仰します」
「五百年後、寶天という比丘の説法により、 二万人が信仰します。仏の眷属たち(八部衆)が、 『このうえなきさとり』の心を持ちます。‥‥が、 正しい法はここから滅尽へと向かいます[c05]」
「六百年後。九十六種類の外道どもが競うように邪見を 広め、仏法を破滅させようとします。しかし馬鳴という比丘の 説法により、外道ども全てを降伏させます」
「七百年後。龍樹という比丘の説法が邪見を退け、正法の篝火を 照らします」
「八百年後。比丘たちは好きな服を着て、遊ぶようになります。 百人千人いるうち、まともに修行できるのは一人二人です」
「九百年後。奴婢を出家させ比丘比丘尼とするようになります[c12]」
「千年後。 比丘たちは不浄観・阿那波那を聞いても激怒するだけとなります。 数え切れない比丘たちのうち、ちゃんと理解するのは一人二人です」
[次] かくて仏法は滅尽せり |