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佛説延命地蔵菩薩経:訓読


 

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Introduction

以下ノ本文ハ

此村庄助 著作兼発行、此村欽英堂 発行 『延命地蔵菩薩経:訓読』(1911;明治44年) [URL]
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本文

[p.3]
仏説延命地蔵菩薩経
唐大興善寺三蔵沙門大広智不空奉 詔訳
如是我聞。一時ほとけ。佉羅陀山にい まして。大比丘衆萬二千人と倶に。菩薩 三萬六千人と倶なりき。一切の諸天。お よび龍夜叉人非人等。金輪銀輪諸輪王等。 十方より来れり。 [ 大雑把訳 ]
そのときに。世尊この 大乗無依の行を説おはりき。時に帝釈あ り。無垢生となづく。仏にまうしてまう さく。世尊われ世を護せんとほつす。仏 の滅後法末の衆生のごときは。まさにい かんがして抜済すべき。仏帝釈に告玉は く。ひとりの菩薩あり。なずけて延命地 蔵菩薩といふ。毎日の晨朝に。諸定にい り。六道に遊化して。苦をぬき楽をあた へたまふ。もし三途にありて。この菩薩 [p.4] におゐて。躰を見たてまつり。名をきか ば。人天に生じ或は浄土に生せん。三善 道にありて。その名をきくものは。現の 果報を得。のちには仏土に生す何にいは んや。憶念せば。心眼ひらくことを得て。 決定成就す。またこの菩薩は十種の福 を得せしむ。一には女人泰産。二には身 根具足。三には衆病悉除。四には寿命長 遠。五には聡明智恵。六には財宝盈溢。 七には衆人愛敬。八には穀米成熟。九 には神明加護。十には大菩提を證す。ま た八大怖をのぞく。一には風雨ときに随 ひ。二には他国おこらず。三には自界そ むかず。四には日月蝕せず。五には星宿 変せず。六には鬼神来らず七には飢渇発 せず。八には人民やまひなし。仏帝釈に 告玉はく。未来世におゐて。もし衆生あ りて。この経を受持し。この菩薩を恭敬 し。供養するものは。百由旬の内に。諸 の灾患悪夢悪相の諸の不吉祥なからん。 [p.5] 魍魎鬼神。鳩槃茶等も。ながく便をえず。 天狗。土公。大歳神宮。山神。木神。江海神。 水神。火神。饉餓神。塚神。蛇神。呪詛神。霊 神。路神。竃宅神等。もしこの経この菩薩 の名を聞ば諸の邪気を吐き。おのづから 本空をさとり。速に菩提を證せん。 [ 大雑把訳 ]
その 時。帝釈仏にまうしてまうさく。世尊 延命菩薩はいかんが六道を化し。衆生を 度することを得玉ふ。仏帝釈に告玉は く。善男子諸法は空寂にして。生滅に住 せず。随縁生の故に。色身同じからず。 性欲無量なれとも。あまねく得度をなし 玉ふ。延命菩薩は。或は仏の身を現じ。 或は菩薩の身を現じ。或は辟支仏の身を 現じ。或は声聞の身を現じ。或は梵王の 身を現じ。或は帝釈の身を現じ或は閻魔 王の身を現じ。或は毘沙門の身を現じ。 或は日月の身を現じ。或は五星の身を現 じ。或は七星の身を現じ。或は九星の身 を現じ。或は転輪聖王の身を現じ。或は [p.6] 諸の小王の身を現じ。或は長者の身を 現じ。或は居士の身を現じ。或は宰官の 身を現在じ。或は婦女の身を現じ。或は比 丘比丘尼優婆塞優婆夷の身を現じ。或は 天龍夜叉人非人等の身を現じ。或は医王 の身を現じ。或は薬草の身を現じ。或は 商人の身を現じ。或は農人の身を現じ。 或は象王の身を現じ。或は獅子王の身を 現じ。或は牛王の身を現じ。或は馬形の 身を現じ。或は大地の形を現じ。或は山 王の形を現じ。或は大海の形を現ず。三 界にあらゆる四生五形変せずといふとこ ろなし。延命菩薩はかくのごとく。法身の 自体あまねきかゆえに種種の身を現じ。 六道に遊化して衆生を度脱す。よく一善 をもすて。三界の有をやぶり玉ふ。こと ごとく心善なるをもつてなり。未来の衆 生発心することあたはずんば。ただまさ に一心に延命菩薩を礼拝し供養すべし。 刀杖もくはえず。毒も害することはたは [p.7] ず。厭魅呪詛起屍鬼等もかえりて。本人 につかん。天に唾をはき風にむかひて灰 を投ずるに。かへりて其身をけがすがご とし。 [ 大雑把訳 ]
その時。帝釈仏にまうしてまうさ く。世尊なんがゆへに名づけて延命菩薩 といふ。その相いかん。仏帝釈につげ玉 はく。善男子真善の菩薩は。心明円なる が故に。如意輪となづけ。心罣碍なきが ゆゑに。観自在となづく。心生滅なき がゆゑに。延命となづけ。心摧破なきが ゆゑに。地蔵となづけ。心辺際なきがゆ ゑに。大菩薩と名づけ。心色相なきがゆ ゑに。摩訶薩となづく。汝等信受して心 に所別なく。忘失せしむることなかれ。 [ 大雑把訳 ]
その時に大地六種に震動して延命菩薩地 より出現して。右膝を曲して臂をたて掌 をもて耳をうけ。左膝を申下して手に錫 杖を持し仏にまうしてまうさく。われ毎 日晨朝に諸定にいり。もろもろの地獄に いりて。苦を離れしめ。無仏世界に衆生 [p.8] を度し。今世後世をよく引導す。もし仏滅 後一切男女。我福をゑんとほつせば。日 凶をとはず。不浄を論ぜず。父母に孝養 し。師長に奉事し。言色つねに和にして 人民をまげず。生命を断せず邪淫をはん ぜず。もしは十斉日。もしは六斉日。も しは十八日。もしは廿四日。ただ自心た たしうして。この経を転読し我名を称ぜ んものは。我れ法眼威神力をもつてのゆ ゑに。すなはち業報を転して。現果をゑ せしめ。無間の罪をのぞいて。まさに菩 提を得せしむべし。我れ過去無量劫より このかた。諸の六道の一切衆生を見るに。 法性は同体にして。無始無終無異無別な れども。無明は異相にして。生住異滅せ り。これ得これ失。不善の念をおこし。 諸の悪業をつくりて。六種に輪廻す。 生生の父母世世の兄弟。ことごとく仏道 を成ぜしめて。後に我れ成仏せん。もし 一人をのこさば我れ成仏せず。もしこの [p.9] 願をしりて。二世の所求ことごとく成ぜ ずんば。正覚をとらず。 [ 大雑把訳 ]
その時に仏延命 菩薩を讃し玉ふ。善哉善哉真の善男子な り。我が滅度の後。未来悪世の罪苦の衆 生。汝に付嘱す。今世後世善能引導せよ。 弾指の頃も。悪趣に堕せざれ。いはんや 無間阿鼻地獄に堕せんをや。延命菩薩し かも仏にまうしてまうさく。世尊おもん はかり玉はざれ。我れまさに六道の衆生 を抜済すべし。もし重苦あらば。我れか はりて苦をうけん。もししからずんば。 正覚をとらず。ときに世尊かさねて。偈 をとつて讃しての玉はく。善哉善哉延命 菩薩は。有情の親友なり。衆生生ずる ときは。その身命となり。滅すれば導師 となる。衆生しらざれば短命にして福な し。我が滅度の後。末法のうちに。国土 に災起り。人王まつりごとみだれて。佗 方の賊きたり。刀兵劫おこらんとき。た だまさに延命菩薩を憶想すべし。今世後 [p.10] 世の所求まんぜずんば。我が所説の法こ のことわりあることなけん。 [ 大雑把訳 ]
そのときに 三千大千世界六変に震動して。文殊師利 菩薩。普賢菩薩。金剛蔵菩薩。虚空蔵菩 薩。聖観自在菩薩摩訶薩等異口同音にし かもほとけにまうしてまうさく。世尊未 来の衆生もしこの経この菩薩の名をきか ば。我等みなまさにこの人に随順して。 心眼明となり。その人の前に現して。所 求円満ならしむべし。もししからずんば 正覚をとらず。その時に梵王帝釈四大天 王。もろのもろの天花をふらして。如来を 供養したてまつり。仏にまうしてまうさ く。世尊未来の衆生。もし自心ただしう して。是非をまげず。賞罰をすてず。こ の経を持しこの菩薩を念せば。我等と眷 属と。この人を擁護して。日夜はなれず。 その国土をして百由旬のうち。もろもろ の災難なからしめん。その国の人民安穏 を得て。穀稼成熟し。所求満足ならしめ [p.11] ん。もししからずんば護世と名づけず。 本覚にかへらず。 [ 大雑把訳 ]
ときに二の童子あり。 左右に侍立す。一を掌善となづく。左に ありて白色なり白蓮花を持して法性を調 御す一を掌悪となづく。右にありて赤い爐 なり。金剛の杵を持して。無明を降伏す。 仏大衆に告玉はく。汝等まさにしるべし。 この二童子は。法性無明を両手両足に す。延命菩薩は。中心の不動阿字を本体 なり。もし衆生ありてこの心をしるもの は。決定成就す。即ち三毒を滅し。自 在力を得。仏土に生ぜんとねがはば。願 にしたがひて生ずることをえん。もし未 来世の一切衆生。延命菩薩を恭敬し供養 したてまつり。疑惑を生ぜずんば。現世 の所求皆満足せしめ。のちには浄土に生 じて無生忍を得せしめん。仏この経をと き玉ひおはりしとき。一切大会の心おほ いに歓喜し。信受し。奉行 [ 大雑把訳 ]
仏説延命地蔵菩薩経 [p.12]

 ○地蔵菩薩真言
唵。訶訶訶。尾婆摩曳。婆婆賀。

明治四十四年三月廿五日印刷
明治四十四年四月五日発行
延命地蔵菩薩経

著作兼発行者 大阪市南区‥ 此村庄助
印刷社    大阪市西区‥ 河野圭蔵
発行書肆   大阪市南区‥ 此村欽英堂
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めも

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国産?

 仏説のような体裁を取ってますが、すでに江戸時代の頃からMade in Japanだろこれ? ‥と言われています。つまり産地偽装の「偽経」ですね。 平安時代末期に作られたのでは? と。 (真鍋広済(1969)『地蔵菩薩の研究』三密堂(第二版;初版は1960).,p.18) (「お経」は基本的には「仏説」のはずですし、このお経も「仏」、この場合は釈迦仏が 説かれたことになっています。そして歴史的には釈迦仏はインド文化圏の人ですから、 必然的に「お経」はインド原産であるはずです。それゆえインド原産でない「お経」は、 その内容の是非にかかわらず、自動的に 産地偽装の「偽経」となってしまうのです。)

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延命地蔵は中心。何の?

 本文の最後のほうに出てくる以下 (原文):

延命菩薩は。中心の不動阿字を本体 なり。もし衆生ありてこの心をしるもの は。決定成就す。
この部分について、本ページでは以下:
(大雑把訳) 延命菩薩はその中心にあり、(阿字の化身たる)不動明王の本体でもある。 これを知る者は「さとり」を得られる。
--- このように大雑把訳しました。 つまり「中心」について、 その前の文脈とつなげて「そ(れら二童子)の中心」と解釈してみたんですけど、

 しかし、この同じ部分について「恐山 奥の院」の看板を見ると:

地蔵菩薩は中心にして不動阿字の本体なり
若し衆生有って是の心を知らば決定して成就す
このように解説してあるのを見つけました。 「地蔵菩薩は中心にして」というのは どういう意味なのか よく わかりませんけど、「世界の中心」という感じなんでしょうか。 このへん、他の資料などを参照していませんので、正直よくわかりません。

 それはそうと恐山では「釈迦地蔵不動一体義」なるものが説かれていることが、 この看板でわかったんですけど。釈迦仏と地蔵菩薩を一体視するというのは よくあることなんでしょうか。このへんもよくわかりません。 恐山菩提寺が曹洞宗でご本尊が釈迦仏であることが望ましいのに‥とか、 そういう事情もあったりするんでしょうか(妄想)。

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関連文献

[ URL: (めも)地蔵菩薩関連の原典 ] に切り分けましたので、そちらをどうぞ

お地蔵様に関しては、とりあえず [ お地蔵さま (概説) ] をどうぞ。

[2012]