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餓鬼について

[佛説救抜焔口餓鬼陀羅尼經]に 端を発して作成している「めも」です。


 

餓鬼とは(1)六道の一つ

[Table of Contents]

餓鬼とは、六道の一つ。

極 楽 浄 土




六道
阿修羅
畜生悪趣
餓鬼
地獄

 「餓鬼」とは何か。基本的には、仏教の世界観における「六道」あるいは「五道」の一つ、です。 すなわち死後、人(を含む生物)が生まれ変わる(いわゆる輪廻転生する)可能性のある6つ(5つ)の状態: 「天」「人間」「阿修羅」「畜生」「餓鬼」「地獄」(「五道」の場合、「阿修羅」を除く) の下から二番目、これが「餓鬼」です。 「天」とか「地獄」とかですと、それ専用の決まった世界がありますけど、たぶん 餓鬼専用の「餓鬼世界」的なのは想定されてないんじゃないかと思います(後述)。

また同時に「餓鬼」とは「三悪趣」なるものの一つ、とされています。 「三悪趣」というのは、上記「六道」のうちの下三つ、これが非常に悪しき境遇、 何があっても避けるべき境遇ということで「三悪趣」と呼ばれています。 「餓鬼」は「六道」の下から二番目ですから、もう堂々と「悪趣」入りしてます。

 そして日本では、この「六道」について「基本的に、人は死後にこれら六道のどれかに 堕ちてしまう。六道はどれを選んでも基本は『苦しみの世界』だから、 何とかして六道に堕ちないよう 人は努力しないといけない」という設定になっています。

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六道 ⇔ 極楽浄土

そして、これら「六道」に堕ちないようにするにはどうしたら良いか?? どこに行けば良いのか (助かるのか?) ‥ということで出てくるのが「極楽浄土」などの「浄土」と呼ばれる世界です。 つまり「(極楽)浄土」と「六道」は対概念になっているんですね。

 ところで、十世紀の貴族社会においては、こうした六道輪廻からの解脱とは、死後の極楽往 生と全く同義であった。 (速水侑(1970)『観音信仰』塙選書72, p.147)

 本来であれば この「六道」の上位にある「天界」に生まれ変われること(「生天」と いうやつ)、それができたら十分幸せなはずですし、 その次点とされる「人界」だって、現在すでに人間としての生を送っている我々にとっては 現状維持な感じな訳ですから、そんなに避けるべきものとも 思えないですけど‥。でもそれらの選択肢は日本の浄土思想では 「やっぱり『苦しみ』から抜けられないから」との理由で切り捨てられていて、 ほとんど「地獄」などと同じ扱いになってしまってます。 かなり極端な二元論を取ってますね。

 この「極楽浄土に行かないと助からない」という かなり極端な考え方は、 日本では源信という人が書いた「往生要集」(10世紀末)[往生要集しおり]が非常に大きな影響を 与えたと考えられています。この「往生要集」が描く地獄の様子が 当時の貴族たちにとっては ものすごく衝撃的だったらしく、 それゆえ当時の貴族たちは ガチにマジで心の底から極楽浄土に恋い焦がれた、と。 (なのでこの「往生要集」を契機にして、日本では極楽浄土往生の思想が 貴族たちの間で大流行することになったみたいです。)

 そして、その避けるべき「六道」の下から二番目、そしてあの恐ろしい「地獄」のひとつ上の レベルが「餓鬼」です。うわー、かなり悪い状況だよなー。‥と、そんな感じのものです。

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餓鬼世界的なものがある訳ではない

 でも「餓鬼」があの「地獄」より ひとつ上だと言われると、どうしても 「あの『地獄』よりも多少はマシな別世界があって‥」とイメージしたくなるんですけど、 それは間違いみたいです。餓鬼専用の世界なんてのは存在しないみたいです。

 これについては『往生要集』にも書いてあって、こんな感じで書かれています:

第二に、餓鬼道を明さば、住処に二あり。一は地の下五百由旬にあり。閻魔王界なり。 二は人・天の間にあり。(源信(石田端麿訳注)(1992)『往生要集(上)』岩波文庫. pp.47--48) [SAT]
「餓鬼は(1)地下深くの閻魔王界に、(2)人々や諸天の中に、住んでいる」とあります。

 餓鬼どもは閻魔王界の片隅にスペースをもらってそこで細々と存在しているか、あるいは、 人間世界や天界の片隅にスペースをもらってそこで細々と存在している、 そんな感じに書かれています。この『往生要集』の説明は 「あちこちの経典を読んで調べてみたら、そんな感じで描かれているようだ」という ことですから、まあ、そういうことなんでしょう。 (ここでいう「閻魔王界」が実のところ「地獄」と同じかどうか? というのは正直 よくわかりません。後代になると同じになってしまってるのは、地獄変とか見ると、なんか、 わかりますけど。昔はどうだったかは別の話)

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