[Muthu]
はこの世にただ一人。その他のものはみな従者。

Muthu に関する


[前] Oruvan @Youtube

歌詞について

DVDとCDについてる訳詞、また映画の字幕とか ビデオとかNHKでやった時も翻訳が微妙に違っていたような気がウッスラとしているのですが、 ここでは2010年以降も入手が最も容易と思われるDVDの訳文を使わせていただきます。

最初の「主人は一人だけ 他の者はみな従者」‥ タミル州なので、ただ一人の「主人」というのは、 たぶんシヴァ神のことが念頭にあるんだと思います。 そして最高者の前では人は 王でも宗教者でもアンタッチャブルであっても皆単なる従者という点で同じである、と。 「運命に屈する敗者 勝つのは賢者」‥運命は自分で切り拓くもので、 自分の運命だからと あきらめる者こそ敗者である、と。これは上の「みな従者」とも 合わせれば、インドで根強い身分制度と、その身分制度の下で あきらめちゃう人たちが 念頭にありそうです[関連図]。 運命は自分の才覚で切り拓くもの、と。 現在の境遇がどのようなものであっても、善行を積むことによって状況は改善していく ‥まあインド思想的ですよね。 (image) ただし「最後に勝つのは大地」、 大地というのは人間を越えたものの象徴ですよね。その彼方には「ただ一人の主人」の 姿がチラつくんですけど。とにかく、多すぎる野望を持っても得る物はすくない、 自分はあくまで従者であることを忘れるな、という感じでしょうか。 そしてさらに「欲を捨てれば 世界はお前の手中に」‥執着を捨てよ、 という仏教によって日本でもすっかりお馴染みになっている価値観が語られます。 欲を捨てると逆に世界はお前のものになる、というのも仏教に通じる考えです‥よね? ヒンドゥー教でも そのあたりの考え方は同じのはずで、 「しゃんからさま の おしえ」[*] を チラ見しただけでもそのあたりのことは感じられるのではないでしょうか。 そしてその延長線上で歌われるのが これ:

手の中にお金が少しあれば お前はその金を使える
のど元までお金が詰まっていれば お前はその金に使われる
これ、はじめて「ムトゥ」を見た時から、かなり強く私の心に残ったフレーズです。 「生きる意味を知って 生を楽しもう」 ‥夢中になって のど元までお金を詰めることが、 あなたの人生にとってどういう意味を持つんですか? という問いですよね。 「生を歓ぶのが人の本来の姿 苦しい人生はあってはならぬ」 ‥正直これはよくわかりません。 古いインドの輪廻・解脱的価値観からいえば 人生は苦しみに他ならないはずですので、 「生を歓ぶのが人の本来の姿」という言葉は出てこないはずなんですけど。 よくわからないですけど、さすがに現代になるとインド人も現世中心的な考えが出てきて それなりに定着してるという感じなんでしょうね。(すみません。インドについては 大昔のことしか知らないもので^^;)

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