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私はマジで仙台に住んでます。「ムトゥ 踊るマハラジャ」なる 妙な映画がバカウケしてるらしいという噂は割と以前から 聞いてはいたのですが、渋谷で毎日のようにものすごい行列 とかいう話を聞いただけで行く気がしなくなります。 そんなある日、私のところに朗報が。
「『ムトゥ 踊るマハラジャ』 東北地方初お目見え!!」秋田県の十文字町というところで開催される映画祭に、 この映画が出典されるというのです。秋田県十文字町‥ 秋田県と山形県の県境に割と近く、冬になると シャレにならないくらいの積雪がありそうな田舎町。 時刻表を見てみると、「ムトゥ」が終わる夜8時頃の 電車ではもう仙台には帰ってこれない、そんな 近そうで遠い町。
でも、あの「ムトゥ」を並ばずに、そしていち早く 目の当たりにするためにはこれしかない!!と 決意してしまった私は、十文字行き (嘘。仙台から 乗り換えせずに十文字に行く列車なんてない^^;) の電車に飛び乗ったのでした!! それは1999年1月15日の、まさに 雪がいちばん積もってそうな時期のことでした!!!
あまりお金を使いたくなかったので、 仙台駅から山形経由、楯岡駅までは「青春18きっぷ」を使いました。 山形駅近辺はそんなに積もってるという感じでもなかったのですが、 天童・東根・楯岡と進むたびに積雪量が確実に増えていくのが わかります。
いかにも寒そうな感じ。自分はこれから本当に「ムトゥ」を見て、 自分はマサラノリ(?)全開のはずの映画を満喫することができるのだろうか?? 会場周辺もきっとこんなに雪が積もってるのに??? と、 だんだん心細くなってきます。楯岡からは特急「こまくさ」に乗り換え、十文字駅で降ります。 きっと他にも何人か『ムトゥ』を見るためにこの駅で降りる人が いるにちがいない‥と思っていたのですが、(その)特急列車に乗って まで『ムトゥ』を見にきた人は私だけのようでした。 自分はひょっとして取り返しのつかないことをしてしまったのでは ないかという不安がどんどん心の中で大きくなっていきます。
十文字駅を出ます。雪が積もってます。誰もいない、しーんとしてる駅前。 「映画祭」で、ちょっとだけ華やいだ雰囲気を予想してただけに、 さらに不安になってきます。駅前にあったピンクの映画祭の 看板だけが私の心の拠り所でした。しかし、なんて静かなんだろう‥
駅から会場までの道のりについては、あらかじめ地図とかで見当を つけてあったこともあり、たいした道案内があったわけでもないのに、 まったく迷うことなく会場に到着できました。 しかし、積もってるなあ‥映画祭の会場なんですけど、 地元青年団の人たちによる手作りの映画上映会という感じで、 なかなかいい感じです。会場に入りますと、ちょうど 『ムトゥ』の前の、台湾かな?の自動車泥棒の映画をやってます。 客の入りはそんなに多くなく、満席の 1/10 程度って感じですかね。 全くガラガラというわけでもなく、周囲の人のことを気遣う必要もなく、 という点で個人的には好きな混雑度です。 やがて映画が終わります。休憩です。さてさてさて。
休憩に入ったとたん、会場に人がどんどん入ってきます。およよよ?? 気付くと、席は8-9割方埋まってしまってます。 周囲の人たちの会話を聞いてますと、 こういう県境の町にも「何かワケわかんないけど、とにかく 『ムトゥ』はスゴいらしい」 「太った中年オヤジが踊りまくるらしいけど、何故かバカウケらしい」 という情報はシッカリと伝わっているらしいことがわかります。 ということは、(私も含めた)会場に集まった人たちのほとんどは、 じつは「何だかわかんないけどとにかくスゴいらしい」という 評判の是非を確認するためにここに集まってきており、 『ムトゥ』が面白いかどうかなんてどうでもいいと思ってるのでは ないかという気がしてきます。なんか変なの。
ぶー。会場にブザーの音が鳴り響きます。ドキドキしてきます。
こんなにドキドキして映画が始まるのを待つなんて、
中学生の頃以来かもしれません。すでに会場の外が
冬まっさかりでかなりの積雪があることさえ忘れかけています。
‥‥私の頭の中がタミルナードゥ・モードに移行するまでは
1分もかかりませんでした (^^)
‥‥帰りの十文字駅。 駅の待合室は暖房が止められてて、バカみたく寒かったです。 帰りの電車を待つ駅のホームは軽く吹雪いてました。 一方、心の中は完全にタミルナードゥに逝っちゃってましたので、 心と体のアンバランスさがとても奇妙に感じられました。
仙台では、その2月後に映画館で公開されましたが、 すでにビデオが2月にレンタル開始されていたこともあって、 あの十文字のときに会場にあふれていた 「何だかわかんないけどとにかくスゴいらしい」という 得体の知れない熱い熱気が全然なかったのは残念でした。
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