[前] かんたんな、しょうかい。 |
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本経は「十王経」ということで、きっと十人の王たちについて いろいろ語ってるんだろうな。 ‥‥そんな感じで読み進めようとすると、ちょっと拍子抜けしますよね。 バランス悪すぎですよね。
5:閻魔王についてだけ やたら大量に書かれていて、しかも その本地(正体)とされている地蔵菩薩についても、わざわざ「地蔵菩薩になった その いきさつ」まで 詳細に述べているんですけど。
それに対し、 5:閻魔王以外の王たち、そしてその本地仏とされる仏菩薩たちについては 名前が列挙されるだけで、 名前以外についてはほとんど何も語られていません。 仏教の開祖として超有名な「おしゃかさま」、釈迦如来についてさえ 「二番目は初江王宮、釈迦如来である」と名前を挙げるだけで、 それ以外は何も語っていません。正直、何だこりゃ? という感じです。
[Table of Contents]地獄変修訂 [ 澤田瑞穂 ] |
これら、本経では名前だけしか述べられていない 5:閻魔王 以外の9人の王たち。
でも他の文献を見れば この9人について いろいろ書かれてるのでは? なんて思って しまうと どうやらそうでもないみたいです。
十王のそれぞれについて 澤田1991は、5:閻羅王、7:泰山王(太山王)、 10:転輪王(五道転輪王)といった よく目にするもの以外の王たちについて、その名前は一体どこから持ってきたものか わからない、と述べています。そのうえ、もし、それぞれの王の名前の由来が わかったとしても、これらの王が何故「十王」としてセット化され、さらに順番まで 決められてパッケージ化されることになったのか、 そのへんのことは全然わからないだろう、と述べています( 澤田瑞穂(1991)『修訂 地獄変--中国の冥界説』平河出版社, p.19.; ただし澤田1991はこのページで紹介している「地蔵十王経」とは別の、 「預修十王経」という文献を参照してます)。
[Table of Contents]5:閻魔王、7:太山王、10:転輪王以外のうち 8:平等王 については ちょっと怪しいこともある唐代『一切経音義』(大正2128)によれば以下:
‥と、このような解説があります。つまり「平等王」とは最初「閻魔王」と同じ、 つまり「閻魔」は yama の音にそのまま漢字を当てたもので、 「平等」は yama を意訳したもの、と (でも yama に「平等」という 意味あるんですかね? sama と混乱したのかな?)。しかし「平等王」という せっかくの訳語は中国で定着することなく、やがて「誰これ?」みたいな扱いになって 結局は十王の中に 5:閻魔王 とは別人として組み込まれた感じなんでしょうか。 閑話休題。
[Table of Contents]でも、なんで「十王」というパッケージ成立の由来は全然わからないだろう、と 言いきれてしまうかというと。それにはいくつか理由があるようです。
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