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Who knows what a GURU is? (現代篇)

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オウム真理教(1) 絶対服従

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おことわり

 「オウム真理教におけるグル」というのはネタとしては本格的に扱おうとすると ネタがかなり大きすぎになる感じですから、とりあえずここでは、 簡単に、サラッと扱う程度でやめておきます。

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はじめに

 「グル」と言われて最初に思い出すのは、1995〜1996年頃に日本中を騒然とさせた 某宗教団体。と名前を伏せるのもアレなので、名前を書くとオウム真理教(URL:http://www.aum-internet.org/)。

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グルの教えを実践すべし

 当時、オウムのサイトを見ればきっと何かあるだろう、と思ってゴソゴソ見てみたところ、 「Aum1−1 布告 // 布告──集え、我が前生の弟子よ!」という箇所に、 こういう記述がありました:

そしてあなたは今、オウム真理教に出合い、 前生のグルであるわたしと出会った。ここであ なたは何をなさなければいけないのか。それは グルの教えを実践し、個人的には悟り・解脱で ある。 [ 集え、我が前生の弟子よ! ]
‥ これを見ると、正直「前生のグルであるわたし」という表現は正直どうかとは 思ってしまいますけど。でも「グル」という単語の意味内容としては、 まあ、自称インド系宗教団体ということで、 やはり「師匠」的な意味で使われているみたいです(‥あ、この教団の場合は 「師匠」でなくて「尊師」か)。

 しかし残念ながら、このページ的に私が最も関心があった 「師匠と弟子の関係の規定」についての、もっと詳細な記述は 見当たりませんでした。ちょっと残念 (-_-)

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グルの意思の実践がすべて。他は無意味

 ‥と書いていましたところ、某ステージが高い超大物な方 :) から情報が 寄せられました。渡されたのは一冊の本です。

日本科学者会議編, 『オウム・超常信仰と科学 -- 青年たちはなぜ殺人集団に加担したのか』, 清風堂書店, 1997
ここに「資料(1) 【信徒庁決意】」という文があるんですけど、その中に 求めていた一文がありました (^o^) (強調部分は私による)
タントラヴァジラヤーナは、グルの意思の実践がすべてだ。 それ以外は無効である。功徳にならない。
グルの指示がすべてだ。それ以外は無効である。功徳にならない。
したがって、結果のためには手段を選ぶ必要がない。
. .
あるいは、高い世界は存在している。
そしてグルに帰依すればその世界に行くことができるということを 認識させるんだ。(日本科学者会議編(1997)『オウム・超常信仰と科学 -- 青年たちはなぜ殺人集団に加担したのか』清風堂書店, p.196-8)
ここでは「グルの意思の実践がすべて」と言い切ってます。 これ、あきらかに 単なる「せんせー」の域を越えていますよね。

 詳しいことは下のほうに書きますけど。 インド的というより、かなりチベット的な師弟関係を想定している感じです。 チベットにおける、ミラレパとマルパ師の伝説あたりをモデルにしてたりするんでしょうか。 この伝説、私には「日没のようにうつむけにして殴り、 夜明けのように蹴りあげられた」という 表現がものすごく印象に残っているものなんですけど。 ‥ある種正しいというか何というか。うれしくなってきます(^o^)

 また、こんなことも書いてあります。『「グルに対する帰依を養うには、 立位礼拝が最適である。..」との一章がある。』(p.204) この「立位礼拝」 というのは何かというと『蓮華印を頭上に掲げて「オーム、グルとシヴァ大神と すべての真理勝者に帰依し奉ります。私‥‥をすみやかに解脱へとお導き下さい」 という言葉を唱えながら、両膝、両肘、額の順に地につけて礼拝をするという修行』 (p.203) なんだそうです。

(この「シヴァ大神」というのは、ヒンドゥー教でいわれるシヴァ神よりも大きな存在で、 麻原はその変化身である‥‥という感じの、オウム真理教独自の最高神みたいです[Wikipedia]。 結局はすべて麻原信仰に結びついてる感じなんですね。)

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グルへの帰依とは、グルの救済活動の手助けとなること

あ。さらに読みすすめていくと「資料(2) 信徒用決意 II」という文があるんですけど、 そこに大量に「グル」が出てくる。

ヴァジラヤーナの修行を進めるには、グルに対する絶対的な帰依が必要である。
帰依はヴァジラヤーナの修行者の欠かすことのできない条件である。
グルはわたしを今の苦しみから脱却させ高い世界へ
解脱・悟りへ導くことができる唯一の魂である。
三惡趣を脱し、解脱と悟りに向かうためには
わたしの今までの培ってきたけがれた観念を捨て
グルに対する絶対的な帰依を培うべきである。
したがって私は帰依するぞ。
グルに帰依するぞ。
徹底的にグルに帰依するぞ。
グルへの帰依とは、グルが解き明かした真理の教えを守り
記憶修習し、生活そのものがすべて真理の実践となり
グルの救済活動の手助けとなることである。
したがって、わたしは徹底的に教学をし、
自己の中に真理の法則を根づかせるぞ。
それによって自己の苦しみを完全に滅し、わたしはヴァジラヤーナの救済者になるぞ。 (日本科学者会議編1997, p.211-2)
「グル」という単語はこれ以降にも出てくるんですけど、 疲れてきたので引用はここまで(^_^;

 きましたね。「グルへの帰依とは‥(略)‥グルの救済活動の手助けとなること」。 ‥‥おもいきり「ポア」に直結していくネタですね。救済活動について、 弟子たちも最初は「説法。時には強引に説法することもあるが、それは救済のためだから‥」といった 程度に思っていたかもしれませんけど。 まさかそれで大量殺人まで行うことになるとは。よくそこまで暴走できたものだ‥。

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[余談] 「ポア」とは

ここで「ポア」という聞き慣れない語が出てきましたけど。この「ポア」とは何かといえば。 要するに「邪魔者は殺してしまう」ということです。 [ チベットのポワについて はこちら ]

 オウム真理教はインド系を標榜してますので、基本「殺生」はダメなはずなんですけど。 オウム真理教では「殺生」を救済の一形態とする口実を作っていて、それが 「このまま生きても悪いことしかせず、悪業を積み重ねるだけだから。 だったらイッソ殺してやることこそ救済」というものです。 殺人は罪悪ではなく、救済である。‥‥そんな屁理屈を思いついてしまった時点でもう、 オウム真理教がテロ行動(破滅)に向かうのは必然でしたね。‥まあ、これは 事件が本当に起こってしまった後だからこそ言えることなんですけど。 (だって、そういう話があったとしても何かの比喩と解釈するのが普通で、 まさか本当に殺人を奨励してるなんて思わないですよね‥)

 高山2006によれば、「ポア」について「オウム神仙の会」時代の1987年1月の集中セミナーで すでに

グルがそれを殺せと言うときは、たとえば相手はもう 死ぬ時期に来ている。そして弟子に殺させることによって、その相手をポアするというね、 いちばんいい時期に殺させるわけだね (高山文彦(2006)『麻原彰晃の誕生』文春新書492, p.198)
こう語っているみたいですから、 「麻原王国建設の野望」と「オウム真理教の創設」と「ポア(を口実とした武力闘争)」は 同じレベルの話と解釈できそうです。んー。 (なお1989年2月に麻原が「殺人=ポア」を示したとして有名な「三百人の貿易商の話」の 元ネタについては [ [ふろく] オウム真理教「ポア」との関係 ] をどうぞ。) (しかしこれに疑問を述べる声もあります。元信者によれば 「弟子たちに向かって危険なことをやれと言っているようには思いませんでした」、 (クンダリニーヨーガ)「のエネルギーを 覚醒しているグルからもらうには、帰依が大事なんだということを極論的なたとえを使って 伝えている話だと思います」(NHKスペ取材班2013, pp.30--31) など。 麻原は極論的な比喩をよく使っていたらしく、弟子たちは その比喩の一つと感じていた、と。)

 しかし個人的には、その「ポア」という言い抜けについては、弟子たちは 「いまの人生で悪い方向に向かってしまう人は、 たぶん そういう流れになってしまってるはずだから、生まれ変わっても 悪いことするんじゃね? だったら殺しても意味ないじゃん」と考えることは できないのかなー、とは思います。‥でもやっぱ、目の前にいる「尊師」から直接

真理に反する者は、はやく殺すほうがいい。殺される者も高いところへ転生する。殺す 者も解脱につながる。 (高山2006, p.199)
こんな感じ(1994/2。松本サリン事件の4月前)で言われてしまうと、 それを疑うのも難しい‥というか、疑うと処分されかねないですからね。怖いなー。

 でも。それでもせめて、教団外部の人らについての 「善」とか「悪」を全部 自分で恣意的に決めてしまうのは止めて欲しかったですね。 「グル」がそういうことを教団内部だけで勝手にやってる分には「好きにしろや」と いう感じなんですけど‥。

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ページ(2)に続きます

ページの分量が多いので、ページを分割しました。空中浮揚関係の話などは次で。
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