はじめに
秋田市楢山に 金照寺山(きんしょうじやま) という山があります。
そこに三十三番の観音像があり、
それら観音像を参拝することによって、久保田三十三観音札所巡礼のかわりとなるみたいです。
2003年に編集された『秋田市史』には以下のような記述があります:
[金照寺山の霊場]
金照寺山の中腹から頂上にかけて三十三番の観音像の碑と
札打ち用の戒名を張り付ける無地の石碑が並立して点在する。一月十六日の
札打ちに参加できなかった人は春になってこの地にある三十三番観音に参拝し、
戒名の書いて紙片を石碑そのものに貼付して近親者の霊を慰めるのである。
(秋田市史 第16巻 民俗編, 2003(H15), p.560)
実際に現地を巡礼してみましたところ、上記『秋田市史』の記述は微妙に間違っています。
上の写真を見るとわかりますが、約三十三体の観音様の石像と、
御詠歌(久保田三十三と同じ)を刻んだ石碑がペアになって(いくつか
現存しないものもありますが‥)安置されています。
戒名を書いた札、これは木札を釘で打ち付ける場所がないので紙札の貼付け限定に
なるでしょうけど、札は御詠歌を刻んだ石碑に貼付けられています。
この石碑、最初から札貼り用に用意されたものなのか、あるいは
そのつもりではなかったものの他に札を貼る場所がなかったので
結果的に札貼りの掲示板に成り下がってしまったのか、そのへんのことは不明です。
しかし、いずれにせよ、札を見てみると
久保田三十三番札所巡礼の札と同じく、
一般的な「観音めぐり」に使う札とは異なっており、
近親者の戒名か、あるいはそれプラス没年か、それしか書かれていない
ことが確認できます(札の写真 [URL])。
このことから、金照寺山の三十三観音は「久保田三十三観音」の
ミニチュア版であり、巡礼の目的は亡くなった親近者の供養であることが
確認できます。