[前] えんぎ |
世尊はあの大きなタマネギ、もとい、ボダイ樹の下で、ついに 真理を体得なされました。そうです、かの方はついに「さとり」 の境地に到達なされ、「ぶっだ」になられたのです!
「さとり」の境地に到達なされた世尊はこうお考えになられ ました。
「私が到達した真理は、ちょースゴい真理だけど、 すごすぎるから、ちょっと他の奴らには理解してもらえない だろーな。布教活動しても、きっと、バカにされるだけで、 何の益にもならないにちがいない。よーし、 こうなったら、自分ひとり、この安楽の状態に 浸りながら余生でも過ごすことにすっか」と。
こうして世尊は、悠々自適の生活に入ろうとなさいましたが、 その現場を目撃してしまった梵天、あわてて世尊の前に その姿をあらわします。
「世尊よ、そりゃないでしょ。せっかくさとったんだから」 「だって、めんどくさい、もとい、やってもムダだよ。 おれがさとった真理はスゴすぎて、そのへんのバカどもに 話したって時間のムダさ。『天才は死んでから評価される』 ってゆーしさー」そこで世尊は『神々しい目』で世間をくまなくご覧になられ ました。世の中には、世尊の教えを知らぬばかりに、 苦しんでいるやつらがいっぱいいるみたいです。
「むむ。なんて投げやりな。あなたは「さとり」を得られた わけですから、当然、超自然的な力をお持ちのはず。 その『神々しい目』で世間をつぶさにご覧になってください。 世尊の教えを必要としている者たちが、この世には 大勢いることが、世尊にもおわかりになるはず」
「えー、めんどいなー。... でも、そこまでいうのなら、 しょーがない。ちょっと見てやるか。どれどれ..」
「(得意げに)どうです、世尊。苦しんでるでしょ」世尊、しばし悩まれた末に、ついにご決断あそばします。
「むむ。なんてやつだ。あんたは『一切世界の主』梵天のはず。 世間の人たちがああやって苦しんでいるのは、あなたの 職務怠慢に原因があるのではないのかね」
「げげ、言うにこと欠いて、何ということを!(-_-# すべてはおまえ、いや、世尊が『法』をお説きにならない ために生じたことでございます。どうか、世尊の お「さとり」になられた真実を、世間の者どものために、 そして、私のために、お説きください。おねがいいたします」
「よし。わかった。世間の人たちがあんなに苦しんでいるんだ。 私は『法』を説くことに決めたぞ。喜べ、世間の者たちのため、 ついに『法門』は開かれたのだ!」梵天は喜び、ふいに世尊の前から消え失せます。
「うーん。なんて現金なやつだ。自分の願いがかなえられた 瞬間に、礼も何もいわずに消え失せてしまうとは!」
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