[Muthu]
はこの世にただ一人。その他のものはみな従者。

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Dharma Dorai 1991

インドでは1991年に公開された映画みたいです。 日本語題は「ダルマドゥライ 踊る!鋼の男」‥‥(^〜^;

結婚を誓う恋人どうし。でも女の父親ラージャと叔父ラーマが大反対。 仕方なく駆落ちしようとしたものの、すぐに追っ手が! 半殺しにされ‥‥るかというところに現れた、一人の男(ラジニ)。 追っ手を蹴散らし、さらに追ってきたラージャとラーマさえ、 男の顔を見ただけで逃げ出した! この寡黙な男、何者?? 男は何も語りませんが、かわりに男の妻パールワティが語ります。 男の名はダルマ。じつはラージャとラーマの兄だったのです。 さらに妻は語るのです。「起きてはならないことが全部 その身に起きてしまった」という、その男の過去を。 ‥‥と、ここから回想シーンが始まるのですが、 じつは物語のほとんどはこの回想シーンになります。

 話はどれくらいかな? 20年以上前の話になります。
この頃のダルマは明るく人々に信頼され愛され、まあ、要するに、 典型的なラジニ演じるキャラという感じです。 ただダルマにはコンプレックスがあって、それは学校に行ってなくて、 それゆえ文字さえ読めないこと。そこで自分の代わりに勉強して 出世してくれと、大学に行ってる弟たちのため、 自分が借金してまでの支援を惜しまないんですけど。 逆にダルマの父親は 弟たちが単なるロクデナシと 見抜いていて(犬とかヘビとか呼んでる!)、 弟たちにはビタ一文もお金を出してくれませんので、 弟たちにとってダルマは貴重な 資金源(そしてその金は遊興などに消える‥)だったのです。 でも父親にここまで嫌われたら そりゃ弟たちもグレるだろうよ、 とは思うのですが‥。

 さらに事件が。ラージャが大学で同級生(?)を襲ってしまったのです。 なんかインド人が白いブラウス(?)着てるのは、なんか、20歳過ぎの人が セーラー服着てるのを見てしまったときのように 何かちょっとドキドキしてしまうのは何なんでしょう、というのはさておき。 ダルマはこの問題をうまく片付けて、二人を結婚させます。 でもどうかな。同級生を襲う男、しかもワルだから、結婚しても どうせ浮気とかDVとかしまくりのような気もしたんですけど、 冒頭のシーンを思い出すと、そんなひどいこともなく大邸宅の奥様に 収まってるようなので まあ良かったですね。それはそうと、 結婚が決まって早々。ラージャが大学をやめてチェンナイで事業を始めると 言い出します。ついては、そのための資金をよこせ、と。 ここでラージャはダルマに訴えます「父さんは兄さんだけ可愛がる」 ‥ダルマもそれを言われると弱いんだな。 結局、借金してまで弟に資金を渡します。そんなダルマに父は忠告します。 「変わらないお前は 慈悲(ダルマ)そのものだ」「お前の慈悲につけ込み-- 奴らがお前を破滅させないか心配だよ」

 弟たちの始めた事業とは、金塊密輸などの闇の仕事でした。 嘘とかタレ込みとか、おまえら小学生か?! というレベルの汚い手をつかって、 ラージャとラーマは闇社会でどんどん成功していきます。 おまえら大学行ってそれかよ‥というのはさておき。 やがて二人を訪ねて、ダルマがチェンナイに「おのぼり」します。 ここでインターミッション。


 しかし。やっぱりというか何というか。 ダルマはチェンナイでは招かれざる客でした。 弟たちが主催するパーティでは 垢抜けないダサダサなファッションは笑いものにされ、 それを恥じた弟たちに召使い呼ばわりされたりします。 ちょっとこのシーンは見るのがツラい‥。傷心のダルマは、 そのまま村に帰ろうとしますが、 ラージャ妻に止められ、一晩泊まることになりますけど。 その夜、刺客ともみ合いになってラーマは刺客を刺し殺してしまうんですが、 無論、ダルマがその罪をかぶって投獄されることに。‥このへん、 とにかく、やられてガマンして、ガマンして、ガマンして‥という ストーリーの組み立て方もありますからね。こうして溜めたガマンの量が 多ければ多いほど最後のシーンは燃えますから、まあ、 どんどんガマンしてくださいよ、という感じです。 物語は続いて。ダルマの服役中に、ダルマに息子ができ、弟たちが実家を売却、 怒った親父が死亡、恨んだ息子も死亡、妻は失踪‥‥。ほら、溜めろ溜めろ。 でも気になるのは、怒りの対象は弟たちということ。 身内を相手に、「無頼」の渡哲也みたいなドス振り回しての乱闘劇やった としても、たぶんこちらも後味が悪いだけになるような気がするんですよね。 そのへん、どうやって溜飲を下ろさせてくれるのか‥。 とにかく、出所したダルマは、再会したパールワティにこう誓うのです。 「たった今から ダルマという人間は変わる」と。

 そしてダルマは弟たちのところに行き、 弟たちを相手にした大立ち回りをするのです。 しかし弟たちへの復讐(制裁かな? とも思いましたけど、 基本的に 感情が昂ったまま突進していった感じのように見えましたので、 制裁とは言えない気がします)の途中。 ラージャ妻がダルマを止めるのです。 何だかんだ言いながら復讐鬼になり切れないダルマは、そこで復讐の手を止めてしまいます。 まあ予想してましたけど、復讐は果たせないまま 「信頼を裏切られた後で 人の結びつきは無用」なんて歌とともに、 2時間に渡ってくり広げられてきた回想シーンは終わります。 (ちょっとスッキリしない展開。)

 話は現代(?)に戻って。 ラージャとラーマが刺客に拉致されてしまい、困ったラージャ妻と娘は、 ダルマに助けを求めに来ます。(あんな無防備な状況で、回想シーンと現代のあいだ、 よく無事で過ごせたな、という感じではありますが‥。) 相変わらず動く気配のないダルマでしたが。そこに妻パールワティが。 「私は何もねだらなかった 初めての頼みよ 私のためにお願い  弟たちを助けに行って」‥‥ダルマが立った! そしてクライマックスに 行くわけですけど。ずっとダルマをひどい目に遭わせてた弟たちを 助けるための大活劇というのは、なんかいまいち爽快感が‥というのは ありますけど、でもやっぱラジニの大活躍はいいですね。 右腕を銃で撃たれてもほとんど影響ない感じですし、それよりも ビルから落下するシーン。これは死ぬだろ?! おおおおー!?

 でも最後、弟たちは反省の言葉を口にしてましたけど、いくら裏切っても 養分にしてもちゃんと自分らを守ってくれる兄貴がいてくれる状況が続くかぎり、 またダルマは簡単に裏切られるだろ?、これ。何の解決にもなってなくね? ‥なんて、あいかわらずスッキリしない気分は残りましたが、でもたしか ムトゥの父上も「人間、騙すより騙されるほうが罪深い」(うろおぼえ)と言って、 屋敷から出て行ってましたよね。ということはやっぱ、ダルマのような人というのは、 インドにおける(ちょっと古風な?)理想的な人物像ということなんでしょうか。 たしかに輪廻解脱的世界観を考えると、現在の生だけの損得を考えてもあまり 意味ないでしょうから。でもその考えを実践するのは大変そうですけどね。 いずれにせよ、だったら、これはこれでアリなのか。

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