国内のインターネット利用者が初めて1000万人を突破した平成9年。博 報堂生活総合研究所は「直訴する社会--待てない人々・触れたい人々」とい うリポートで、利便性の向上を指摘する一方、すぐ結論に飛びたがる▽我 慢強さの低下--といったマイナス面を挙げ「待てない人々」の増加を予見し た。
それから10年。コミュニケーションツールはさらに高性能になり、「宅配便の 配送状況やバスの待ち時間もネット上で確認できる。漠然と何かを待つこ とはほとんどなくなった」と、リポート作成に携わった知識創造工房ナレッジ・ ファクトリーの林光代代表は話す。
目白大学の渋谷昌三教授(社会心理学)は、そんな「待つ必要がない社 会」の到来を複雑な思いで見つめる。「パソコンや携帯を駆使して即座にほ しい情報が引き出せる。だから、物事がさくさく運ばないと耐えられずに、暴 力的な言動に出てしまうこともある。『待たせない』サービスに慣れすぎたがゆえの皮肉な現象かもしれま せん」(海老沢類)