[前] はじめに |
そして世尊はこの偈を説き終わられたのち、阿難とともに王舍城に赴かれ、 そこで比丘たちに教えを説き広められました。 次に巴連弗邑に到着され、長者居士梵志などの人々のため、 教えを説き広められました。 続いて毘耶離城に到着され、 離車、女らの人たちのため、教えを講演し広められました。 そのとき世尊は病に襲われ、全身のどこも痛くなられ、 尊者阿難に語られます。「身体がどこも痛む。ボロくなったこの身体を捨てたい[c23]。 阿難。比丘比丘尼で四神足を獲得するものがあれば、 寿命を一劫にすることができ、その劫が終わるまで世間に留まることができる。 まして如来であれば、そのへんのことは意のままなのだが」と。 しかし悪魔がその言葉をかき消したため、 阿難は何も答えませんでした。これが三度続いたのち、 世尊は阿難に仰せです。 「ちょっと樹下で、専精思惟し正観諸法して来なさい」と[c27]。
そのとき魔波旬が仏前に出現し、頭をさげ、足に礼して仏に申し上げます。 「私は以前、世尊に涅槃に入られることをお願いいたしましたが、そのとき 世尊は私にこう申されました。我が弟子たち、比丘比丘尼優婆塞優婆夷たちが まだ受戒していないから[1011a01]、まだ涅槃に入るわけにはいかないのだ、と。 ‥世尊。いまや、その四部衆たちは皆 受戒が済んでおります。 善逝はすみやかに涅槃されますように」と。
世尊は、悪魔に答えられます。「よし、波旬。如来は今より 三月後に涅槃に入る[a05]」と。魔波旬は、仏が自分の願いを聞いてもらえて 大喜びです。仏足に頂礼して天宮に還っていきました。
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