[かんのんさま::メモ]

かんのんさまは南に西に

[梵文法華経/24:かんのんさまの章] に関する「めも」です。

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観音さま概説(1)古代

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まず「かんのんさま」の歴史について、概略を簡単にまとめてみます。

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参考文献

参考文献は以下など:

  • 速水侑(1970)『観音信仰』,塙選書72. (本ページのネタ元メイン)
  • 速水侑(1996)『観音・地蔵・不動』,講談社現代新書1326.
  • 鎌田茂雄(1997)『観音のきた道』, 講談社現代新書1341.

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古代(インド〜中国)

インド・中央アジアにおいて観音信仰が起こったのは2世紀頃か。 ただ法顕(4〜5世紀)のインド旅行記で観音様について言及するのは一度だけなので、 その時期はまだ信仰の範囲は限られていた? 玄奘(7c)の『大唐西域記』では ところどころに観音様に関する言及があり、法顕の頃よりも観音信仰が高まっていた ことがわかる。中国での観音信仰は、おそらく法顕が熱心な観音信者で、 その火付け役になった? なお中国・龍門石窟の調査から、5世紀は釈迦・弥勒、 7世紀には阿弥陀に、それぞれ次いで2〜3位の仏像造像数になってるので、 長期にわたって人気者の座をキープしている。これは法華信仰の強さとの絡みか。

 観音像作製の理由はじつは圧倒的に「亡者追善」らしく、じつは「観音経」に 出てくるような現世利益はかなり少ない。またフダラクに関するものも皆無。 これは、やはり中国では祖先崇拝の信仰が非常に強いことが原因ではないか。 実際、観音以外の他尊もほとんどは「亡者追善」のものらしい。

「観音経」は、実のところ『妙法蓮華経』から25章「観世音菩薩普門品」だけを 抜き出したものです。けど、抜粋ということに気づかなかった人が多かったから(?)なのか、 古い時代では「妙法蓮華経」とは別モノとして扱われていることも多いです(後述)。 [ 関連:: 梵文法華経::[24] かんのんさまの章 ](梵文では章立てが若干違い、24章です)

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日本の観音は呪術的護国的(〜奈良時代)

観音信仰が日本に入ってきたのは7世紀頃。日本でもやはり「亡者追善」のために 観音様に‥というパターン。ただ、薬師仏のような例外を除くと、どの仏菩薩も 基本的に同じ扱いなので、日本でも根強い「先祖崇拝」の枠組み、 在来の神様に対する呪術的期待をそのまま海外先進国から 導入した「最新の神様」に当てはめた感じなのだろう。 (仏像という、端正な人形のご神体にきっと人々は強い衝撃を受けたはず。)

 白鳳末期(8世紀初)から奈良時代になって ようやく経典に関心が向いてきて、観音様に現世利益的な効験も期待されるように。 ここでのポイントは、当時は「観音経」と「法華経」は別モノとして 考えられていたらしいこと。「法華経」は滅罪、「観音経」は護国のカテゴリに入れられており、 観音経は護国、すなわち反乱鎮圧・陰謀対策等に効果ある現世利益的呪術的効能が 期待され、それゆえ観音信仰は密教的・呪術的な方向に大きく発展した。 (なので、結果として観音様は旧来の「追善」と、現世利益の両面に期待されることに。) 密教的観音信仰は密教的変化観音像を出現させ、ここから十一面観音などが登場してくる。

「滅罪」「護国」など、要するに「『お経』がもつ摩訶不思議なマジカルパワー」に 多くの人たちの期待が集まっていたように思われます。なのでマジカルパワーを 最大限に引き出してくれそうな「密教」「呪術」方面に、観音信仰は大きく発展したんですね。 その結果、十一面観音などが「密教的にパワーアップした観音様」として、 マンガに喩えると「スーパーサイヤ人化した孫悟空」や 「ジェットスクランダーと合体したマジンガーZ (古い‥)」のような感じに 受け止められ、注目されてきた感じでしょうか。

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