[ ぐる Top || 歴史篇 ]

Who knows what a GURU is? (歴史篇)

「グル」の歴史を見てみよう。

[Since 1999/10]


[前] ヴァッラバ派の概要

ハレ=クリシュナ教会にみるグル

たまたま [ クリシュナ意識国際協会日本支部 ] のページを見つけました。
そこで早速「クリシュナ意識国際協会」における「グル」の扱いに ついて調べてみました。

 最初は 「グルとは?」 というページを見れば一発で解決!! とも 思ったのですが 1999/05 時点ではまだ工事中でした (^_^;
. . . その後完成されたページを見てみますと、 「神に仕えることに撤して、みずから模範となって 教えを授けなればならない。」とありますので、 神(== クリシュナ?)とグルとは別と考えられているといえそうです。

[ Last modified: 1999/11 ]


まずクリシュナ様とバガヴァッド(尊者)を同一視するのはそんなに珍しいことではありません。 [ Definition -- Encyclopedia Britannica ] でも見てきたとおり、 ヴァッラバ派でも bhagavad == kṛṣṇa == guru という図式が成立しているわけですし、 「ギーター」だとまさにクリシュナ様がバガヴァッドの言葉を語られるわけですし。

 ちなみにこの「クリシュナ意識国際協会」とヴァッラバ派のあいだの歴史的な 関係なんですけど、 「神の科学の誘い」 というページから類推しますに、 「クリシュナ意識国際協会」は 「シュリー・チャイタンニャ・マハープラブ」(ヴィシュワンバラ・ミシュラ) に源流を持つようです。これは前田先生の本を見てみますと... あったあった。

ヴィシュヌ系のチャイタニヤ(Caitanya)派 --(略)-- は、イスラム教徒の支配下に あったベンガル州ナヴァドヴィーパ(Navadvīpa)に生れたチャイタニヤ (Caitanya 本名 Viśvaṃbhara Miśra 一四八五−一五三三年) によって創始された。かれは ヴァッラバとほぼ同時代者であるが、かれ自身は著作を残さず、ベンガル地方で クリシュナ・ラーダー崇拝の熱狂的な宗教運動を起こし、愛(preman)の精神を 強調した。この派の教義はかれの弟子であったルーパ(Rūpa Gosvāmin)や サナータナ(Sanātana Gosvāmin) 等によって整備された --(略)
(『ヴェーダーンタの哲学』,p.29)
またダスグプタ大先生の以下の記述からは、 チャイタニヤ様の生きざまがうかがえます。 チャイタニヤにおけるクリシュナへの愛というのは 「男性に対して深い愛情を抱いている女性の愛と同じ状態」(p.168) らしいんですけど、
クリシュナへの愛は、チャイタニヤの人生における最も恍惚とさせる熱情であった。 --(略)-- クリシュナについて考え、クリシュナを探し求め、幻視したクリシュナの 姿を語ったりすると、そのことに圧倒されてしばしば気を失った。 --(略)-- チャイタニヤはこのような宗教的陶酔状態の中で過ごし続けたのである。 --(略)-- 最後にチャイタニヤは、抑えることのできない神的な熱情の突発に身を委せ、 南インドの深く青い海の中に飛び込み、人間の眼からは永遠に失われたのであった。 (高島淳訳『ヨーガとヒンドゥー神秘主義』,pp.166-169)
ヴァッラバ派の場合と比較してみますと、 ヴァッラバ派は「主人に対する従者のように神を親愛する」のに対し、 チャイタニヤ派は「自らの最もいとしい愛人ないし恋人として神を愛する」(p.165) 点が特徴的といえそうです。そういえば先にもあげた 「グルとは?」というページには 「真摯な弟子はグルに強い愛情を抱くようになる」 とありますが、これはチャイタニヤの熱情が今もまだ受け継がれていると 見るべきなんでしょうか。個人的にはグルに対する愛情というよりは、 本当は神に対する愛情なのがグルに対する愛情のようにも見える、 といったほうが好きなのですか。
ところで Damodara Dasa さんからのメイル にあったのですが、 「グルというものは弟子と神の間に立つ「透明な媒介」」なんだそうです。 つまり、上にあげた「グルに強い愛情を抱く」という表現はそのまま 「神に強い愛情を抱く」と取ってよさそうです。

 このチャイタニヤ派と ヴァッラバ派との関係については私には全然わからないんですけど、 同じ時期に同じクリシュナ信仰が起こったということは、そういう時代だった(とくに これらが特異なものではなかった)ということは言えそうですね。


そんな中で「グル」はどのように位置付けられているか、を見てみましょう。 具体的にはクリシュナ様とグルの関係ですね。

  • 「クリシュナ意識国際協会とは」 のページにあった文章。
     ヴェーダ文化を伝承するのはヴェーダ文典ばかりではありません。ヴェーダ の精髄を体得した師 (グル)の存在も見逃してはなりません。 師が弟子にヴェーダの哲学を伝え、弟子が次代の師とな ってそので師に 教えを伝えました。この「師弟継承」は至上主クリシュナ自身にさかのぼり ま す。「師弟継承」によって、カリ・ユガながらもヴェーダ文化は生きた形 で現代にも伝わっています。
「グルはクリシュナの後継者」という理解になるわけですね。 ということは「グル」と「クリシュナ」はかなり近い位置付けがなされていても不思議ではなさそう... なんですけど、それだけでは両者が同一視されていたかどうか、については何も言えませんね。 そこで英語版の FAQ も合わせてみることにしましょう。
  • [ Frequently Asked Questions ] から guru に関する部分を抜き出してみる。
    Q: Why do you worship an ordinary man (the guru)?
    ( 拙訳: あなたがたが普通の人間(guru)を崇拝するのは何故? )

    The bona-fide guru is not an ordinary man. He is not worshipped as God, but as the representative of God. Because he gives us Krishna, we offer him all respects. That's simple gratitude, if nothing else.
    ( 拙訳: 真正なグルは普通の人間ではありません。かの方は God としてではなく、 God の代理人として尊敬されるのです。 かの方は我々に Krishna を授けてくださるゆえ、 我々は一切の敬意を捧げるのです。それは感謝の念に他なりません。 )

    Q: How can one tell a bona-fide guru from a fake one?
    ( 拙訳: 真正なグルと偽物とをどうやって見分けるのですか? )

    The guru's qualification is that he delivers the message of God, as set down in the scriptures and the tradition, without alteration or adulteration. He has to be saintly in character, and coming from a succession of spiritual masters originating right from God. Perhaps most important of all, what he says must work. By following his instructions, one must develop love of God. One must feel himself becoming detached from the material concept of life and get more and more attached to spiritual life. The symptom of a real medicine is, the fever must go down and healthiness must improve.
    ( 拙訳: 聖典と伝統の中に記された God のメッセージを、改変・混交することなしに 伝えることがグルの条件です。また、かの方は高徳で、 ちょうど God から始まる精神的指導者の継承者として現れる方ですので、 おそらく最も重要なのは、かの方が仰せのとおりに、必ず、なることです。 かの方の教えに従うことによって、人は God の寵愛に到達したり、 人生について物質的概念の厭離・精神的な人生により近くなるよう意識するように なるのです。 真実の薬に含まれる効果とは、熱が下がって健康が回復することなのですから。 // うう、ひどい訳文 (-_-) )

この FAQ の中では、krishna == guru であることが明確に否定されていますね。 つまりクリシュナ様は「最高の存在」であると同時に、 最初の「真実と求道者とのあいだの媒介者」 でもあったんですけど、その後 guru たちがその「真実と求道者とのあいだの媒介者」 という部分だけを引き継いだ、という感じで理解しちゃってよいのでしょうか?? もしそういう理解で正しいとしますと、実は [ マヌ・スムリティにおけるグル ] というのと 基本的に同じ、かなりオーソドックスなグル観を持っているといえそうですね。

でも Caitanya 派の流れを汲む団体って、 Hare Krishna しかないのかな?? そのへんも調べてみよう。


その後、 クリシュナ意識国際協会の Damodara Dasa さんから メイルをお寄せいただきました。この件に関しましては、 [ Damodara さんからの情報 ] をどうぞ。
[次] チベットにおけるグル