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アニメFantastic VoyagerのGuru氏の紹介を書いてるとき、ふと気づいたんです。 明示的に「グル」とは言われていないものの、どう考えても「グル」的な 存在として位置づけられている人が、昔のテレビ番組に出てたなー、って。 それも、私がとても大好きなテレビ番組の中に。そのグルの名はダイバダッタ。 といっても、あの仏教経典などで有名なダイバダッタ(提婆達多)とは 同名ながら別人ですし、いかなる関係(たとえば、その末裔だとか‥)も 明示されませんし、そういうのを ほのめかす「何か」もありません。 そのへんは注意してください(何に?)。 そして。その番組の名は『レインボーマン』あるいは 『愛の戦士レインボーマン』(1972--1973)。
この番組においては、主人公ヤマトタケシが師ダイバダッタのもとで 修行を重ねた末、番組第二回の最後になってようやく レインボーマンの境地に達するという、 スケールの大きなヒーロー誕生物語を語っています。 そこでダイバダッタはどのように描かれていたか。 それを探るため、まずは番組の第一回、第二回をチェックしてみましょう。
インドとパキスタンの戦争。この戦争に巻き込まれる、一人の少年。 彼の名はヤマトタケシ。「下町の黒豹」という異名を持つ少年。 彼は、ヒマラヤの奥地にいるというヨガの仙人、ダイバダッタを 訪ねてきたのでした。道中、インド軍の男に職務質問?を受けてるとき、 少年が持参したダイバダッタの写真を見た軍人は、 写真に向かって祈りはじめます。そんなにスゴい人なのか! と タケシや我々の期待は膨らむ訳です。
ところで。なぜタケシはダイバダッタを目指すのでしょうか。 タケシはヌルすぎる高校のアマレス界から飛び出し、 プロのレスラー、つまりプロレスラーになろうと考えていたのですけど。 そんなタケシに先輩が言うのです。
さて話をインドに戻して。 戦火の中、ダイバダッタの元に向かうタケシですけど。 たまたま出会った母娘の、娘のケガの手当てをしていたところ、 居合わせた兵士たちにゲリラと勘違いされ、射殺されてしまいます。 あああ‥。
‥ここで「レインボーマン」の第一回は終わりです。続く。
[Table of Contents]無論、タケシはもう死んだりしませんよ。崖上に立つダイバ師が 投げた枝が崖の途中に刺さって、タケシはその木の枝につかまることで、 なんとか助かるのでした。‥え? 崖の上から枝を投げて、それを崖の途中に つき刺すって、可能??? ‥いや、ダイバ師だから。超自然的な力、使えますから。 そしてついに。ダイバ師のアジト(?)にたどり着くタケシ。やったね。 しかし当然フラフラです。
疲労困憊なタケシに、ダイバ師は「元気が出る」という、 謎の飲物を飲ませます。 ソーマのイメージなんでしょうか。 一口飲んだ途端、グビグビと飲み干すタケシ。‥しかしそのくせ、 途中でその液体を吐き出します。
その後のタケシの修行。逆立ちしたり、岩の上をカニ走りしたり‥。 なんかインド的というより、映画とかで見る少林寺的な感じでしょうか。 というより、スポ根マンガとかでよくある「特訓」ですねこれ。 まあ本当にインド系仏教系らしく読経とか禅定だけの修行をされても、 テレビ的には全く盛り上がらないですからね。 子ども番組の限界というやつでしょうか。
そんな中、徐々にダイバダッタ師が持つ秘術の一部が明らかになってきます。 まずは「遠当ての術」。呪文ののち「どわぁ」と叫んで両腕を振ると、 岩石が粉々。そして次が「火炎の術」。これも呪文ののち、指先から炎が。 おお! ‥とか思ってたら、ダイバ師の指令。 火炎の術の結果できた「炎の道」を渡れ、と。‥んー。 たしかこれと同じことをどっかのバラエティ番組で本当にやって、 なんか死人が出たとかいうニュースなかったっけか。 やっぱ普通の人はやっちゃダメですよね。ダイバダッタ師のような聖者じゃないと。 我らがタケシはどうかと言うと。やはり、全身炎に包まれてしまうのですけど。 ダイバ師は落ち着いたもので、両手の指先から、今度は火炎じゃなくて 水を噴出させて、タケシを救出してます。しかしタケシも挫けません。 炎の道渡りを繰り返してます。 火渡りの次の特訓は、滝の上からの飛び降り。 そして滝壺の中にある白い石を拾ってくること‥‥て、白い石、デカッ!! (笑)
[Table of Contents]くじけそうになるタケシに、ダイバダッタ師が語りかけます。
ダイバダッタ師は、タケシを戦場に連れていきます。 そしてタケシの目の前で、銃弾に倒れた兵士たちを、 次々と生き返らせるのでした。奇蹟だ! しかし悲しいかな、 生き返った兵士たちは再び殺し合いを始めようとします。 ダイバダッタ師は彼らを一喝します。
このダイバダッタの理想は、この後登場する 「死ね死ね団」(日本人は憎いので皆殺しにしてやる! と息巻く人たち)の 登場によってさらに際立つのですが、それはさておき。 このダイバダッタの理想って、たぶん原作の川内康範氏の理想そのままですよね。 晩年はワイドショー等で「偏屈な耳毛のじーさん」的扱いをされてましたが、 この人、じつに信念を持った熱い人ですよね。‥というのもさておき。
このダイバ師の説教を前に、銃を捨ててひれ伏する戦士たち。 かくてタケシの心の闇は落ち、心底ダイバダッタ師を尊敬するのです。 今風に言えば、マインドコントロール完成といったところか。 ただ「ダイバダッタ師の術があれば、妹みゆきの足を治せるじゃん!」という、 ちょっとした下心があるようにも見えますけど‥ (ただし。どうでもいいことですけど、妹みゆきの足は最後まで治らず、 最終回に手術のため飛行機に乗って渡米することになります)
そして1年後。特訓の甲斐あり、 いつしかタケシは火炎の術、水噴射の術(というのか?)を身につけていました。 ダイバ師の言葉。
こうして修行を終えたヤマトタケシは、 レインボーマンとなって ひとっ飛びで日本に帰国します。第二回目終わり。
‥ここまで熱く書きすぎて分量が多くなりすぎましたので、分析編は別ページに続きます。
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