[前] 1-5 愛人とその媒介(1) |
[22]四種に婦人のあることは上(四、五を見よ)に叙べた。然しチャーラーヤナに従へば更に第五種の婦人がある。上に述べたと類似 の理由で交るも罪とならぬものである。即ち王者若くは貴族と昵近に して必要な寡婦若くは或点に於て家事に関係せるこの種の婦人である。 若くは或点に於て他の男子と関係あり、彼と共になす或る仕事に有用 な寡婦である。
[23]この種の寡婦はスヴァルナナーブハに随へば行者の役目をなし第六種に属する。
[24]ゴータカムクハに随へば第七種の婦人がある。これは娼婦の娘の処女なるもの、若くはその婢の処女なるもの。
[25]ゴーナルディーヤの分類に随へば第八種の婦人がある。月経[p.29a]来潮期に達せし処女(月経来潮まで婚するを得ざりし娘)である。こ れは第一種のものと全く異つた形式で親近せらるべきである。
[26]然しヴァーッチャーヤナ以後の学者の意見ではこの最後の四種の婦人を分出した目的たる、最初の四種に関して述べたものとは全く 異つたもので、これらを別説する必要はない。かくて只四種類の婦人あ るのみである。
[27]或る学者はトリティーヤープラクリティ(即ち両性)を別立して第五種とする。この一種は他の四種とは全く取扱ひを異にする。 これらの用途は第二品性交篇の口唇性交の章で述べる。
[28-31]良人に就ては一般に只次の二種があるのみである。第一種に形式上一婦人に結婚せしものである。妻以外の婦人に交はる秘 密の情人は前者と目的を異にするところから第二種に属する。尚其上 に上中下の区別を設くるは或る一定の性質を具有すると否とによるも ので娼婦篇の中に述べる。
[32]次の種類の婦人とは性交をしてはならぬ。(1)癩病その他厭ふべき疾患に罹れるもの、(2)狂女、(3)或る重罪を犯して種族 外に逐はれたもの、(4)情人の秘密を洩らして彼に恥辱を与へたも の、(5)公然と情事をなすもの、(6)年齢性愛の時期を過ぎたる婦 人、(7)身体の白きに過ぐるもの、(8)黒きに過ぐるもの、(9) 嫌ふべき臭気を有するもの、(10)法典の規定に結婚を禁ぜられた る親縁のもの、(11)妻の親友、(12)女行者、(13)親族のも のの妻、(14)友人の妻、(15)聖火を守るものの妻、(16)王 妃。 [p.29b]
[33]パーブラヴィーヤの意見によれば、良人以外の男子五人に通ぜし婦人には交るを禁ぜず。即ちその婦人とは上に述べし理由に対し て性交をなすも罪とならぬ。
[34]ゴーニカープトラに随へば上の認容も親族、友人、聖者、国王の妻に対しては適用せられない。
[35](市民の生活をなすに当り、人は友人其他から援助を受けねばならぬ。この援助を受ける友人は次の如くである)。(1)幼年より の遊び友達、(2)曾て援助をなせし人、(3)目的習慣を同じくせる もの、(4)学友、(5)相互に秘密、私行を知れるもの、(6)乳兄 弟。
[36]友人として願はしかるべき性質の主なるもの、(1)一代二代三代祖先以来友人であつた家族の裔なること、(2)異つた気質で ないこと、(3)節を改めざること、(4)従順なること、(5)常恒 不変、(6)貪らざること、(7)忠実有用なること、(8)秘密を洩 らさぬこと。
[37-38]次の職業のものは援助を与へるので友となる、(1)洗濯屋、(2)理髪師、(3)花売り、(4)香料を〓ぐもの、(5)酒 売り、(6)乞食僧、(7)牧人、(8)ベテルを売るもの、(9)鍛冶、 (10)講談師(ビータマルダ)、(11)淫者(ヴィタ)、(12)道化もの。市民はこれらのも のの妻と友たらねばならぬ。これらの婦人は情事に特別な援助となる ものだから。
[39]情事の使について、良人と妻との共通なる友はその両者を愛するものだが、然し男子よりも寧ろ婦人を一層親密にするものだから [p.30a]情事の使には適当なものである。
[40]雄弁と、勇気と、表情姿態の知識と、行動の適当な機会を知つてゐることと、聡明と、決断と、判断性と、怜悧に事を成し遂げる ことは使ひの願はしかるべき性質である。
[41]自分の本性即ち三勢力の知識を薫染せしめられ、援助する友人を有せる、市民の義務に注意深き、婦人の方の身ぶりや其他の情事 の表示をよく悟る、動作の場処と時機を知れるものは、たとひ得難き も、愛する婦人を骨折なしに得ることが出来る。
以上聖ヴァーッチャーヤナの性愛の学、第一品総説篇に於て、第五章愛人とその媒介終る。
第一品総説篇終る。
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