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十王讚歎鈔

伝 日蓮上人 撰(伝 1254(建長6)年)『十王讃歎鈔』の大雑把訳です。

[ 底本: 立正大学宗学研究所編(1954)『昭和定本 日蓮聖人遺文 第三巻』総本山身延久遠寺, pp. 1966 -- 1993. ]


[前] 2:初江王/釋迦如來

3:宗帝王/文殊師利菩薩

三七日は宗帝王、本地は文殊師利菩薩である。

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業関

この王の内裏へ詣る道に業関という関所あり。 関守の鬼の姿は、喩えるものがない。頭の角16本、顔に眼が12個、 [p.1975] この眼が動くとき 稲光のように光り、口からは炎を吹く。罪人ども、この鬼を見るや否や気絶する。 鬼は眼を閉じて罪人を落ち着かせ「ここは関所だ。通行税を払え」と言うが、 罪人どもは「生前の財産は、息絶えたとき全部失い、何も持っていません。一着だけあった衣服も 三途河で剥ぎ取られました。今は見てのとおり裸で、出せるものは何もありません。 なのでタダでお通しください」と申す。 すると鬼は眼を開き激怒して「ここに来るほどの罪人どもは殺生・泥棒・強盗の類である。 その罪業はその手足で行ったのだろう、汝の手足を通行税に出せ」と言うや否や 罪人の手足を切り取って鉄板の上に並べる。

 罪人しばらく気絶したのち、業ゆえに影のごとき手足ができている。 自分で歩くわけでもないが業風に吹かれて、 なんとか宗帝王の御前に参り、泣く泣く自らの無実を奏上する。

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宗帝王の裁定・倶生神

大王は「汝は嘘つきだ。罪業なければここには来ない。ここで無罪を申しても、 バレない訳はない。汝が生前つくった罪業は全部、倶生神が記録している。 全部読んで聞かせてやる」と大王が自ら読み上げられる。 その音は雷鳴のように大きく、声を聞くだけで失神するほどであるが、 生前なした罪業、殺・盜・婬・妄などの重い罪業、さらには 自分以外誰も知らないはずの悪業などを一つ [p.1976] 一つ漏れなく仔細に読み聞かせられると、 罪人どもはただ黙って嗚咽するのみである。

 しかし何とか罪業を逃れようと思って「私の罪業については仰せのとおりでありまして、 言い訳できませぬ。なれど娑婆には子どもがおりますので、その中に孝行息子がいれば 善根を送ってくれるかもしれません。大王のご慈悲をもってお待ちいただけませんか」と 願い出れば、大王は顔は恐しけれども内面にはご慈悲深いゆえ「汝の罪業はすべて明白であり、 地獄行きは間違いないが、すこし待とう」と宣う。 罪人は大喜び。こうして待つ間に孝行息子が善根なせば、 亡者は罪人なれども地獄を免れよう。さすれば大王も追善を喜ばれ「子は汝と似てないのう」と お褒めくださる。

 ここで判決の出ないときは次王に送られる。

[次] 4:五官王/普賢菩薩