[Table of Contents]帽子
韓国の歴史(風)ドラマを見ていて気になるのが、帽子です。
朝鮮の人たちは、とにかく帽子をかぶるのが好きだったように見えます。
‥でも、ちょっと気になることもあります。
私も外出時など、よく帽子をかぶります。私にとって帽子で重要なのは「つば」の部分。
あの「つば」があると 日射しも小雨も目に当たらず、
これが非常に快適だなと思ってるんですけど。でも、どうでしょう?
ドラマに出てくる人たちの帽子を見てみると、「つば」の部分が網目状になっていて
あれでは日光も雨粒も通過してしまいそうですので、
帽子かぶっても全然嬉しくないように思いませんか?
この疑問点に関連することも、朝鮮事情1874を見たら書いてました。曰:
ヨーロッパの帽子のように丸くはあるが、それよりずっと狭く、僅かに円錐形であり、頭のてっぺんに
ちょうど合い、そのなかに頭の編髪がぴったり入り、一方の側がふさがっている筒を想像してみて下さい。
この筒にはヨーロッパの帽子のようなつばが付いていますが、そのつばが桁はずれに広いので、
その全体がしばしば直径六十センチ以上の円を形づくっています。この帽子は、繊細な糸のように
細く長く挽いた竹で骨組みを作り、この骨組みの上に、馬の尻毛でみごとに編み上げた布地を置いて
作ります。この帽子だけでは編髪の上に落ち着かないので、紐を付けてあごの下をしばりますが、
官職にあるものは、自分たちの財産と品階に応じて、黄色の琥珀やその他の宝石を紐の飾りとします。
この帽子は、雨も、寒さも、日射しさえも遮ることができません。それどころか、かえって不便で
さえあります。 (朝鮮事情1874, p.296)
‥なるほど。帽子に求めるものが、現代の我々‥もとい、私とは違っているという
ことですね。私にとって最も重要な「つば」は彼らにとっては そんなに重要ではない。
なぜなら、彼らにとって帽子とは何よりもまず「編んだ頭髪を収納しておく、入れ物」
だから。完全に帽子の用途が違うんですね。「つば」部分さえも飾りでしかないんですね。
なるほど‥
[Table of Contents]「ちょんまげ」は大事!
そして。この帽子と密接に関係しているのが長髪。朝鮮流の「ちょんまげ」ですね。
んで、この「ちょんまげ」は19世紀末の朝鮮人たちにとっては「民族の誇り」と言ってよいほどの
大事なものだったみたいです。イザベラバード女史によれば、1895年12月30日に朝鮮で布告された
勅令(断髪令)のあと、大騒動になったみたいです。
The rural districts were convulsed. Officials even of the
highest rank found themselves on the horns of a dilemma. If
they cut their hair, they were driven from their lucrative posts
by an infuriated populace, and in several instances lost their
lives, while if they retained the Top Knot they were dismissed
by the Cabinet.
(Isabella Bird Bishop(1898), p.364. [Web Archive]) //
農村地区が激しく揺さぶられた。最高の地位に居る役人でさえも進退に窮した。もし断髪
すると、激昂した大衆にその利益のある部署から追い払われる。なん件かの実例では生命を
落としている。一方、もし丁髷を保持していると、内閣から解職される。
(朴尚得訳(1994)「朝鮮奥地紀行2」東洋文庫573, p.236)
Countrymen, merchants, Christian catechists, and
others, who had come to Seoul on business, and had been
shorn, dared not risk their lives by returning to their homes. ...(snip)...
and peasants
who had been cropped on arriving did not dare to return to
their homes, prices rose so seriously by the middle of January,
1896, that "trouble" in the capital was expected,
(Isabella Bird Bishop(1898), pp.364--365. [Web Archive]) //
田舎の人、商人、キリスト教伝道師、
その他の人たちが仕事でソウルに遣って来て断髪されてしまった。生命を賭ける事になるの
で、敢えて故郷に帰れなかった。‥(略)‥
着いたとたんに断髪されて
しまった農夫たちは、敢えて故郷に帰れないでいたので、物価が一八九六年一月中頃までに、
ひどく高騰した。それで首都の「騒乱」が予想された。
(朴尚得訳(1994)「朝鮮奥地紀行2」東洋文庫573, pp.237--238)
さらにこの丁髷騒動の中、実権を失っていた朝鮮王がロシア大使館に逃げ込んで
専制君主としての地位回復、内閣更迭、そして断髪令廃止、その後‥
The mob, infuriated, and regarding the Premier
as the author of the downfall of the Top Knot, gave itself up to
unmitigated savagery, insulting and mutilating the dead bodies
in a manner absolutely fiendish.
(Isabella Bird Bishop(1898), pp.367--368. [Web Archive]) //
総理大臣を丁髷没落の作者と見做
している激昂した暴徒たちは、その和らげる事のできない凶暴性のままに、まったく残忍な
遣り方でその死体を侮辱し、手足などを切断した。
(朴尚得訳(1994)「朝鮮奥地紀行2」東洋文庫573, p.242)
正直、そこまで怒るの?! ‥という風に思わないこともないですけど。
でも現代でも韓国のデモは過激なことが知られてますから、じつは100年前から変わってない、
朝鮮(韓国)文化ということなんでしょうか。
[Table of Contents]断髪令は日本の陰謀?!
もしくは。どこからか「断髪令は日本の陰謀」という噂が流れていたらしいのも影響してそうです。
Among the reasons which rendered the Top Knot decree
detestable to the people were, that priests and monks, who, instead
of being held in esteem, are regarded generally as a
nuisance to be tolerated, wear their hair closely cropped, and
the Edict was believed to be an attempt instigated by Japan to
compel Koreans to look like Japanese, and adopt Japanese
customs. So strong was the popular belief that it was to Japan
that Korea owed the denationalizing order, that in the many
places where there were Top Knot Riots it was evidenced by
overt acts of hostility to the Japanese, frequently resulting in
murder.
(Isabella Bird Bishop(1898), pp.363--364. [Web Archive]) //
断髪令が朝鮮の人びとに大いに嫌われる理由の一つは、尊敬される代わりに寛大に扱われ
る厄介者、と一般に見做されている僧侶・坊主が髪を短く剃っているからである。また断髪
令は、朝鮮人を日本人のように見せ、日本の風習を無理やり取り入れさせるために日本がけ
し掛けた企てである、と信じられていたからである。朝鮮が独立国家たる資格を奪われる状
態に陥ったのは日本の所為である、という一般の所信は非常に強かった。それは、丁髷騒動
が起こった多くの場所で日本人に対する公然たる敵対行為によって証明された。その結果、
しばしば日本人殺害が起こっていた。
(朴尚得訳(1994)「朝鮮奥地紀行2」東洋文庫573, p.236)
20世紀を間近にした頃になってもなお強固な中華思想に固まっていた彼らにとって、
蛮人どもの国・日本の風習(と彼らが感じていたこと)に自分たちが従わないといけない‥。
つまり「世界の中心」にいる我らを、蛮人のレベルに引きずり降ろす陰謀だ! 誰がそんな
陰謀に従うか!! ‥といった感じなんでしょうか。
‥なんか、これが最大の原因のような気がしてきました。
「日本が朝鮮民族の精気を抹殺しようとしている」という陰謀論的発想は、
すでにこの時期に強固に存在してるんですね。‥‥めんどくさー。
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