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[memo] 朝鮮韓国に関する雑多なメモ(宗教系)

題 [memo] 朝鮮韓国に関する雑多なメモ(宗教系)
日付 2016.10
パッチワークの読書メモ



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木の下にある祭壇

20世紀初頭の話ですけど。 死者の魂は木に宿る、といった考え方はあったみたいですね。 そこをちょっとメモっておきます。

It is approached under a tasselled straw rope, one end of which is wound round a fine tree with a stone altar below it. On another rope were suspended a few small bags containing offerings of food. If a person dies of the pestilence or by the roadside, or a woman dies in childbirth, the spirit invariably takes up its abode in a tree. To such spirits offerings are made on the stone altar of cake, wine, and pork, but where the tree is the domicile of the spirit of a man who has been killed by a tiger, dog's flesh is offered instead of pork. (Isabella Bird Bishop(1898), "Korea and her neighbors", F.H. Revell Co., pp.95--96. [Web Archive]) // そこには房を付けた藁綱の下を通っ て近づけた。その藁綱の一端は、みごとな木の周りに巻き付けられていた。その木の下に石 の祭壇があった。別の綱には、供え物の食物が容れてある、小さな袋がいくつも吊されてい た。もし、ある人が黒死病で死ぬか、または路傍で行き倒れるか或は女の人が分娩で死ぬと、 その精霊は、必ず木にその住まいを構える。そのような精霊には、石の祭壇の上に菓子や酒、 そして豚肉を置いて供え物とする。しかし、その木が虎に殺された男の人の精霊の住まいで ある所では、豚肉の代わりに犬の肉が供えられる。 (朴尚得訳(1993)「朝鮮奥地紀行1」東洋文庫572, p.162; sect.7)
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「虎に殺された」というのは、なんか日本との違いを感じますよね。 当時の朝鮮人にとっては、虎に襲われることが現実的な脅威であったらしいことは イザベラバードの本を読むとわかります。 (関連情報: 韓国のトラを絶滅させたのも朝鮮人 ) ‥とまあ、それはさておき。

 行き倒れの人、また子(後継)を産めずに亡くなってしまった嫁など。そういう人たちの霊は、 祀ってくれる家人のない、居場所が特定されない浮遊霊だから。だから、そういう霊の 居場所を用意して、そこに霊を拘束してしまう。‥そんな感じなんでしょうか。 でも供えものを木に吊るす、というのは日本ではあまりないですよね。 供えものを地上に置いておくとそこに虎が来るから‥とか、そんな事情も あったりしたんでしょうか。

 ‥なんて思ってたところ。20世紀初頭におけるその風習と関連してそうな 現代の写真を、たまたまネット上で発見してしまいましたので紹介(無断転載)しておきます。 [ 未婚の妊婦は割増です、違法中絶手術医師摘発 ] というブログ記事にありました。‥でも この写真の解説もそうですし、実際に写真を見てもそうなんですけど、吊ってるのは 確かに石ですよね‥。あれ? 100年くらいの間に、変わってしまったんですかね。

 あるいはアレですかね。行き倒れとか、役目を果たせなかった嫁に対しては食物を吊る。 しかし生まれなかった子に対しては石を吊る。‥といった感じの風習があったものの、 いつしか前者については忘れられ、後者だけが残った感じなんでしょうか。 前者は時代に沿った形で葬送のしかたが変化していったのに対し、 後者は表沙汰にしにくい話のくせに需要だけは高いまま現在も続いてる、そういう感じなのかな? (いずれにせよ、 このブログ記事は怖い話すぎ‥。言われてみると「ああ、そうか。確かにそうだよな」という感じではありますけど、こういうウラの話って、外からは なかなか見えないですからね)

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巫女と鬼神

なんか朝鮮の巫女のことが気になってきたので、さらに調べてみました。

The mu-tang is, of course, according to the belief of those who seek her services, possessed by a powerful daemon, and by means of her incantations might induce this daemon to evict the one which was causing the sickness by aiding her exorcisms, but where the latter is particularly obstinate, she may require larger fees and more offerings in order that she may use incantations for bringing to her aid a yet more powerful daemon than her own. (Isabella Bird Bishop(1898), p.351., pdf:p.401. [Web Archive]) // 巫堂は、彼女の宗教的儀式を求める人びとの信じるところによると、もちろん、強力な鬼 神に取り憑かれている。まじないによってこの鬼神を説得して悪魔祓いを手助けさせ、病気 を惹き起こしている鬼神を追い立てる。しかし後者の鬼神がとりわけ頑固だと、彼女は、自 身の鬼神よりもずっと強力な鬼神が助けに来るようにするまじないを遣う、と言って、沢山 の謝礼ともっと多くの供え物を要求する。 (朴尚得訳(1994)「朝鮮奥地紀行2」東洋文庫573, p.216)
なるほど。日本だと験力とか法力とかに当たるところ、つまり「お経のマジカルパワーで」とか 「修行者が体得したマジカルパワーで」といったあたりの感じのところを、 ここでは「取り憑かせた鬼神のマジカルパワーで」といった感じになってるんですね。

 これを読んだあとで、上でも紹介した [ minaQのつぶやき 네토미나 ] というブログ、その中にある [ シンちゃんの書けなかった韓国の巫女について ] という記事を見てみると‥。 個人的に「おや」と思ったのが以下:

雑多の神を順番もなしにならべることによって本人の能力が増すという自己暗示によってとんでもない世界観で形作られる韓国型占い文化

このところ。つまり巫女たちは 何かの体系的な信仰体系を持ってるという訳じゃなくて、 単純に、マジカルパワーが強力そうだ(とお客が思ってくれそうなものだ)ったら、 中国でも日本でもアメリカでも何でもいい、ということなんですかね。だから 伝統もヘッタクレもあるか! というのが伝統なんでしょうか。

(右絵:中村金城 画(1910;明43)『朝鮮風俗画譜』富里昇進堂.中の「巫女」)

 イザベラバードの話に戻ると、悪魔祓いがうまくいかない時はもっと強力な鬼神を呼ぶといって より多くの謝礼を要求する、と書いてありますけど。これってつまり相手の弱みにつけこんで 吹っかけてるということですよね。‥まあ、普通か。

 ところで。韓国の済州島で「十王迎え」という儀式が行われることもあるらしいんですけど、 ここで迎えられる「十王の差使カンニム」とここでいう「鬼神」の関係がちょっと 気になるところです。よくわからないんですけど‥ ( 参考: [ [朝鮮]済州島の巫覡と十王 ] )

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鬼神は二種類

上のブログの写真でさらに気になったのは、なんか山のように積まれた供物。 チョコパイ風のものとか、リポビタンDみたいなドリンクとか、 そこにそういうのはどうよ?? と思ってしまうものが山積している訳なんですけど。ひょっとして それと関係してそうな話をまたイザベラバードから探してみました:

The phrase "daemon-worship" as applied to Korean Shamanism is somewhat misleading. These legions of spirits which in Korean belief peopled the world, are of two classes, the first alone answering to our conception of demons. These are the self-existent spirits, unseen enemies of man, whose designs are always malignant or malicious, and spirits of departed persons, who, having died in poverty and manifold distresses, are unclothed, hungry, and shivering vagrants, bringing untold calamities on those who neglect to supply their wants. It is true, however, that about 80 per cent, of the legions of spirits are malignant. The second class consists also of self-existent spirits, whose natures are partly kindly, and of departed spirits of prosperous and good people, but even these are easily offended and act with extraordinary capriciousness. These, however, by due intercessions and offerings, may be induced to assist man in obtaining his desires, and may aid him to escape from the afflictive power of the evil daemons. The comfort and prosperity of every individual depend on his ability to win and keep the favor of the latter class. Koreans attribute every ill by which they are afflicted to daemoniacal influence. Bad luck in any transaction, official malevolence, illness, whether sudden or prolonged, pecuniary misfortune, and loss of power or position are due to the malignity of daemons. (Isabella Bird Bishop(1898), pp.404--405., pdf:p.454. [Web Archive]) //  朝鮮のシャーマニズムに用いられる「鬼神崇拝」という言葉は、少し誤解されている。朝 鮮人がこの世に住んでいる、と信じている大勢の精霊には二つの階級がある。その最初のも のだけが私たちの鬼神の概念に相応している。それは自立自存の精霊で、人間の目に見えな い敵である。その下心は、いつも敵意か悪意の有るものである。貧困や災難で死んだ人の精 霊の多くは裸にされ、飢え、震えている浮浪者になり、欲しい物の提供を疎かにする人に数 え切れない程の災難をもたらす。大勢の精霊の約八十パーセントが敵意を持っている、とい うのは真実なようである。第二の階級もまた自立自存の精霊である。その性質は、時には親 切である。富裕で善良な人の死んだ精霊である。しかしその精霊でさえもすぐ怒り、非常に気 紛れに振る舞う。しかしながらその精霊は、正当な執り成しと供え物によって、人間が望み の物を手に入れるのを手助けし、悪鬼が人を困らせるその力から人間が逃れるのを援助して くれるかも知れない。各個人の快楽と繁栄は、精霊の後者の階級の好意を克ち取り、保つ能 力に懸かっている、という。
 朝鮮人は、その苦しめられるあらゆる災難を全て鬼神の影響の所為にしている。取り引き での不運、役人の悪意、急病、持病、金銭上の損失、力もしくは地位の喪失などは鬼神の敵 意にその原因を帰している。 (朴尚得訳1994, pp.291--292; sect.34)
簡単にまとめると、朝鮮における「鬼神」には2種類あって、
  • 人間の敵。貧困などで不幸に亡くなった人の精霊。裸で飢えていて、供物をくれないと ひどい目にあう。大部分がこれ。(でも「裸で飢えて」って、「餓鬼」のイメージも 混じってるんですかね?)
  • 裕福で善良な人の精霊。怒らすと面倒だが、供物などをちゃんと備えると助けてくれる
こんな感じだそうです。日本のカミと近い感じですかね? 18世紀後半の『日東壮遊歌』 1763/11/13 付を みるとこんな感じ:
人力の及ぶところではなく  ただ傍観するばかりであったが
波が押し寄せた瞬間  勢いで舵がうまく固定されたという
これぞ天の助け  鬼神のなせる業である
まさにそのとき、光煌々と輝き  祥瑞の虹が
船を包み込み 陽の光が雲間より洩れはじめる
奇特、不可思議 千古にまれな出来事である  (高島淑郎訳(1999)『日東壮遊歌--ハングルでつづる朝鮮通信使の記録』平凡社東洋文庫662, p.173)
日本だと「神様のおかげ」とか「観音様のおかげ」と言ってそうな場面で、 同じような感じで「鬼神のなせる業」と言っています。でもそれだと上で紹介した 「取り憑かせた鬼神のマジカルパワーで」とちょっと合わなくなりそうですけど。まあ 取り憑かせるのは巫女たちの用例で、一般人は日本のカミと近い感じで、と理解すれば 良いんでしょうかね。

 イザベラバード女史からの引用に話を戻しますけど。 朝鮮の鬼神崇拝(daemon-worship)がどう誤解されてたか、というのはよくわかりません。 悪魔教みたいな感じなのかな? ‥というのは、さておき。 供物が何故そんなに山盛りかといえば、 鬼神たち(というか死霊なのか? というか実際は巫女たち?)が欲しいものの提供を疎かにすると、 鬼神(死霊)たちが怒るから? そしてやたら供物の分量が多いのは、朝鮮の「質より量」の食習慣が影響してるから?? ‥そんな理解でよいのかな??? そして巫女たちの最も重要な仕事が「堕胎」とするなら、やっぱりそれって、生まれてこれなかった子どもの祟りを怖れての供物ということ? (でもそれって、1970年代以降の日本の水子供養と同じか‥)

 それと、どうでもいいことかもしれませんけど。すでに李氏朝鮮時代から、 朝鮮人において「何か失敗するのはすべて他者(鬼神)のせい」なんですね。ははは。

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[Memo] 霊魂撃退法

たまたま見つけたので、とりあえずメモしておきます。

 日本の戦国末期における朝鮮出兵で、 小西行長・加藤清正軍が現在のソウル市を陥落させた日のこと [Wikipedia]。 なぜかあの『三国志』などで有名な関羽の霊魂が朝鮮軍に加勢して倭軍(小西・加藤勢)と戦った、 という民間伝承があるんですけど。そのとき‥

然るに関帝のこの陰助を判つた清正は大いに驚いて直ち に自分の馬の頸を斬りその血を関帝に向つて振撒いた。すると関公の顕霊は忽ち消えてしまひ倭 兵は鬨声を揚げ乍ら城内に殺到した。(魂霊は禽獣の血を以て祓ふものといふ)。 (孫晋泰(1930)『朝鮮民譚集』郷土研究社(Repr.勉誠出版2009), p.81.)
「魂霊は禽獣の血を以て祓ふ」とありますけど、日本でそういう「生贄」みたいなのって、 あまり見かけないですよね。朝鮮というか中国朝鮮の伝承なんですかね。 たまたま見かけて「へー、そうなんだ」と思ったので、忘れないうち、とりあえずここにメモ。


関連(?)情報

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