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[memo] チョハンて何?

題 [memo] チョハンて何?
日付 2013.8



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はじめに

どーでもいいことなんですけど。 「イエス大師」という、イエスキリストと歴史的には同一人物なんですけど、 その宗教的な評価というか理解のしかたがちょっと違う感じになってる人 (‥と書いても、訳わかんないと思いますけど、実は私もよくわかっていません^^;) について書かれてる ページを見てたら、こういう表現を見つけました。

Ascended Master Teachingsのエリザベス・クレア・プロフェットによると1956年1月1日にクートフーミとともにマイトレーヤ(彼は「惑星のブッダ」と「宇宙的イエス」の役目を引き受けた)の後を継いで世界教師になった[3][4]。この信条は伝統的な神智学の支持者やアリス・ベイリーやベンジャミン・クレームの信奉者には受け入れられない。彼らはイエス大師がそれまで通り「第六光線のチョハン」であると信じている。 (Wikipedia:ja:イエス大師)
‥んー。正直、この引用した部分に書かれていることの半分も理解できてないんですけど、 それはさておき。

この引用箇所で気になったのが「第六光線のチョハン」です。この、第六光線とかいうのが 訳わかんないですけど。しかしそれ以上に気になったのが「チョハン(chohan)」です。 どっち系の どういう単語なのか、まったく見当もつきません。何その単語??

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チョハンは人名?

ということで調べてみました。神智学系の人たちって基本、 いろんな古典文化のごった煮・いいとこ取りですから、 それが何語ぽいかさえ、いまいち見当つかないじゃないですか。 なのでカタカナで検索してみたところ どうやらインド系らしい、ということは すぐわかりました。

  • 「アーユルヴェーダの権威」とされる人の中に 「パルタップ・チョハン」という名前の人がいるらしい
  • 「インド人の苗字でチョハンというのは多い名ですか?」というQA。そのベストアンサーは 「多いとは言えません」
  • あちこちのサイトで「マハチョハン」という単語が出てきている。普通に考えると「マハ」は インド系の単語なので、「チョハン」もインド系の可能性が高い‥のか??
どうやらインド系の、そんなに多いわけではない名前らしい、 ということはわかります。

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チョハンはチベット語! (1)持法者

でもインド系言語で「チョハン」?? 何それ? と思い、あちこち調べてはみたんですけど、どうやったらヒントが出てくるのかさえ、 さっぱりわかりません。スペルさえ見当もつかないのです。 そこでさらに調査をしてみたところ。

One scholarly researcher into these matters has found the word “Chohan” to apparently be a more or less phonetic spelling of a Tibetan compound word which in the unphonetic transliteration spelling in use amongst academics today equates to “chos-’chong-pa” meaning “Lord of the Faith,” “Protector of the Faith,” “Dharma Protector,” and “Holder of the Buddhist teachings.” It is exclusively a Tibetan Buddhist phrase and, as Richard Taylor writes, “like Blavatsky herself, her direct teachers appear to be particularly Buddhist, even if their entire ‘Brotherhood’ is not. ( THE SECRET BOOK OF DZYAN IS THE MULA KALACHAKRA TANTRA.)
こんなページが見つかりました。
「チョハン」は実際の発音に基づいた表記であり、現在の学者の人たちが使う (発音をそのまま表記するのではない)チベット文字の転写方式を用いて書くと chos .hcho^n pa だ、と言ってます。なるほど、そっちか。 「マハチョハン」の「マハ」は インドっぽい形容詞を 後になってから まさに「とって付けた」のか。 わからないはずだ‥。

 仏教風に訳すと「持法者」くらいですかね? 下の画像は Chandra Das(1902),"A Tibetan-English Dictionary", Calcutta.(Repr. Rinsen 1969) ですけど、ここには "Lord of the faith"(大師さま) とか "a title of honour given to distinguished scholars" (すげー学者への尊称) などの意味があり、上で引用した文の語釈そのままですね。

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チョハンはチベット語! (2)護法者

この説、 「チョハン」の使われ方と意味内容がほぼ合致しますので、まあ、納得できるんですけど、 chos .hcho^n pa は「チョハン」と発音するのか? といったあたり、 正直よくわからないのが残念なところ。 その後、たまたま別説を見つけましたので、そちらも紹介させていただきます。

“Chohan” or “Chokhan” is simply the Masters’ and HPB’s way of writing – as phonetically as possible in the days long before any standardised system of Tibetan or Sanskrit transliteration had been established – the Tibetan word “Chokyong.” In the Wylie system of transliteration, this same word is rendered as “chos skyong.” [What is a Chohan?]
[大雑把訳] "Chohan" とか "Chokhan" という表記は独特だけど、これはサンスクリットやチベットの 標準的なローマ字表記ができる前の時代のものだから仕方ない。今風な Wylie 式で書けば "chos skyong" だ。

 こちらもチョハンはチベット語 chos skyo^n か! ‥ふむふむ。なんか音的にはこっちの方が良さげな気がしますね。 これも Chandra Das(1902) にちゃんと説明があって、それを見ると‥

chos skyo^n dharmmapaala protector, defender of religion, is used for a certain individual deity or for a class of exorcists in some of the monasteries of Tibet. Under this head there are certain powerful deities who have taken on themselves the duty of defending Buddhism against its enemies. When co-erced they can even make their appearance in the person of the invoker. ‥(略) (Chandra Das(1902), pp.115--116)
[大雑把訳] 保護者、宗教の守護者。特定の個別の神格、もしくは いくつかのチベット寺院の祈祷師たちが 属する階層のひとつ。 彼には眷属がいて、ともに敵からの仏法守護の使命をもつ。 召喚されると召喚者に憑依して(?)姿を現わす。‥(略)

 んー。意味的にはちょっとどうですかね。 Chandra Das の説明だと 「仏法の周囲にいて、仏法のもとで励む人たちを外敵から守る神格」、もっと平たく言ってしまうと 「仏法の用心棒」的な感じにしか見えず、teacher 的なニュアンスは微塵も感じません。 あるいは「祈祷師たち」のところですかね。でも英語で exorcists、エクソシスト とあるんですけど、エクソシストは善良な人たちの teacher たり得るものなのでしょうか??? んー。

 ということで。こちらの説については、音的には良さげですけど、意味的にはイマイチかなー。

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インド人のチョハン

これで個人的には一応スッキリしたんですが、でもまだちょっと気になることもあります。 インド人の中に「チョハン(Chohan)」という名前の人たちが実際に存在していることです。 でもインド人がチベット系由来の名前なんて つけないよな普通?! ‥ということで、 ムチャクチャ簡単に調べてみました。

 まず Chohan は Chauhan, Chouhan とも書くみたいで[en:Wikipedia]、んで Chauhan で調べてみると、すぐこんなページが:

チャーハマーナ朝(チャーハマーナちょう、英語:Chahamana dynasty)は、6世紀半ばから12世紀末にかけて、北インドのラージャスターン地方に存在したヒンドゥー王朝。ラージプートの王朝でもある。チャウハーン朝(Chauhan dynasty)とも呼ばれる。首都はアジュメール、デリー。 [Wikipedia::チャーハマーナ朝]
西北インドで500年以上続いた王朝の名前ですか。確かにそれなら インド人の中に「チョハン」という名前の人がいても おかしくないですね。 しかしその名前、6世紀から ということだとチベット起源の名前としては ちょっと古すぎですね。 チベットへの仏教伝来は7世紀頃と言われてますから、それより前に チベット語に「持法者」とか「護法者」なんて単語があるとは思えないですから‥。

 ‥となると、インド人の名前の「チョハン」はサンスクリット?! でも対応する単語が思いつかないぞ‥とか思いながら、さらに検索してみたら:

Chauhan Name Meaning
Indian (northern states): Hindu (Rajput) and Sikh name of great and ancient prestige but unknown meaning. [ Chauhan Family History ]
[大雑把訳] 西北インドの(Hindu,Sikhともに)武人(王族)の有名な名前だが、意味は不明。

 このページには出典がついていて "Dictionary of American Family Names (C)2013, Oxford University Press" だそうです。Oxfordが出した辞書に「意味不明」と書いてる ということはつまり、本当に意味不明なんでしょうか(-_-)

 でも意味がわかったとしても、インド人の名前の「チョハン」が スピリチュアル系の「チョハン」と繋がる意味である可能性は、なんかものすごく低いように思います。 やっぱり前述のとおり「チベットへの仏教伝来以前からあるっぽい名前」なのがどうしても 引っかかります。人名としても「武」系ですしね。そのへん、どうなんでしょうね。

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正解は? (1)

その後。別件でWikipediaを見てたら、チョハンに関する記述が加筆されてることに気づきました。 そこでその加筆部分を紹介しておきます。めもめも

霊的進化を完成させた人間が大師(マスター)であり、彼らが諸文明の発展を導いていると考えた[8]。 ‥(略)‥ 大師に出会うことができた人間は、グレート・ホワイト・ブラザーフッドの一員になるためイニシエーション(通過儀礼)を受けるが、これは9段階で構成され、どこまで通過したかによってグレート・ホワイト・ブラザーフッドの「ハイアラーキー」(階級組織)に占める位置が区別される[8]。第一から第四までは大師になるための前段階で、第五階級は大師の入り口であり、これに到達した人間は「超人」(アセーカ)と呼ばれる[8]。第六から第九までは、それぞれ「首長」(チョーハン)、「大首長」(マハー・チョーハン)、「仏陀」「世界君主」と呼ばれ、その上に世界の創造主として「ロゴス」が君臨している[8]。 (Wikipedia::神智学 (2015/5/10 04:57版)
Wikipediaを見た印象では、なんかリードビーターという人が言い出した話みたいですね。 訳語は「首長」。‥んー。「持法」より「護法」のが近そうな訳語ですね。 でもこの説明文を読むとチョハンは「アセーカ (Pāli: asekha, Skt: aśaikṣa. 伝統的な訳語は「無学」)」と「ブッダ (buddha)」に挟まれた 位置づけになってますから、「持法」のほうが近そうな気持ちがしないこともないですよね。 んー、微妙‥

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正解は? (2) 教法者

さらに探したら、いちばんシックリくる正解を見つけました。たぶんこれだな!

Chohan is a word that according to H. P. Blavatsky means "'Lord' or 'Master'; a chief".[1] Although Mme. Blavatsky claims the word comes from the Tibetan language, its origin has not been identified. In the Mahatma Letter No. 18 the word is spelled as "Cho-Khan", the Tibetan words chos (pronounced with a silent "s") meaning "dharma" ("teaching", "doctrine", or "law") and khan (spelled mkhan) means abbot. Also, the word mkhan as the second member of a two-part word means "one who practices or is skilled in" something. [Theosophy Wiki::Chohan]
chos mkhan poか‥。

マハートマー書簡 No.18 に書いてあったんですね。 マハートマー書簡て、たぶん神智学協会の根幹にかかわる文書だと思いますから、 これが典拠となるんでしょうけど。実際に見てみると アルファベットで "Cho-Khan" としか書かれてない(右図)!! 上記 Theosophy Wiki でも書いてあるように「ブラヴァツキー夫人はチベット語だとは 言うものの、元ネタ不明(its origin has not been identified)」なんですね!

つまり Theosophy Wiki の説 "chos mkhan" も仮説のひとつに 過ぎないという話のようです。これについても一応 Chandra Das(1902) を引いてみると‥

mkhan po pra^saastaa upaadhyaaya a professor employed to teach; the head of a monastery. In Tibet the head of a particular college attached to a monastery, high priests lamas, and professors of sacred literature, are called mkhan-po; also learned men, who as such are endowed with the mkhan rgyud or spiritual gifts or descended heritage from their spiritual ancestors, are called mkhan-po. ‥(略) (Chandra Das(1902), p.179)
"chos mhkan" という項目はなくて、 "chos" と "mhkan" はそれぞれ別単語、合成すると 「教法者」「説法者」といった感じですかね。意味的にはこれが一番ピッタリ来そうです。 ただ辞書に "chos mhkan" という項目がないということは "chos mhkan" なんて称号は ない か、あまり使われてない称号という ことになりますので、そのへんがちょっと引っかかりますね‥

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[ふろく] その他の「チョハン」

朝鮮語でも「チョハン」という単語を使うみたいで、 [ 韓国語辞書(ケイペディア)] を見ると「 저항 」で「抵抗」という意味だそうです。 人名でも「チョハン」というのはあるみたいで、検索するといろいろヒットしますね。 まさかスピリチュアル系「チョハン」の語源が朝鮮語とは思いませんけど‥


関連(?)情報

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