トータカ が シュリーナガラ に つたえられる
シャンカラ様はカルナタカのトゥンガバドラ川の岸にある、シュリーナガラという
場所にやって来られました。そこは学者たちの町で、
多くの者たちがヴェーダ聖典を学び、また苦行を実践していました。
シャンカラ様はそこに学校を開くことを決意なされました。
シャンカラ様はその土地がたいそうお気に召されて、
サラダーの女神の神殿をおつくりになられるほどでした。
シュリーナガラの学校では、今日に至ってもなお、サラダーの女神が
崇拝されています。
さてこの土地で、シャンカラ様のもとにギリという名前の新しい弟子が
加わりました。この者はすこしノロマに見えましたが、
自分の師匠であるシャンカラ様に対し、かなり献身的でありまして、
昼といわず夜といわず、いっしょけんめい師匠のために尽くしておりました。
ある日のこと、彼は師匠の衣服を洗濯しに出かけ、戻ってくるのがすこし
遅れてしまいました。
彼はシャンカラ様の講義の時刻になってもまだ戻ってきません。
シャンカラ様は彼のことを思われて、講義を始めるのを遅らせました。
弟子たちの一部はイライラしはじめ、
ついにパドマパーダがこう言いだしました。
「ギリは壁みたいにノロい奴です。
あんな奴が帰ってくるまで講義を始めるのを待っているのは何故ですか?」
シャンカラ様は講義をはじめる気になられました。
そこで黙ってギリに祝福を授けられました。
それから数分ののち、ギリがその講堂に姿を現しました。彼は
トータカの韻律をもつ 8 節の賛美の詩、彼の師匠を讃える詩
を口ずさんでおりました。
その場に居合わせた弟子たちは皆、
それまでギリはノロマでどうしようもないバカなやつだと思っていましたが、
彼が口ずさんでいる歌を聞いて、彼の天才的な資質と学識に、
びっくり仰天しました。
この日を境に、ギリは皆から尊敬されるようになりました。
彼はトータカの韻律をもつ賛辞の詩をつくったため「トータカーチャーリヤ」と
呼ばれました。シャンカラ様はこの聖地に数年のあいだにわたってご滞在なされ、
アドヴァイタの教えを説かれました。