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佛説目連正教血盆経


 

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Introduction

以下の文書は、

錦仁(2003)『東北の地獄絵--死と再生』三弥井書店., p.99
この書籍に「図」として掲載されている「源正寺(秋田市)蔵『血盆経』(17.1×27.6cm)」を、 大雑把訳したものである。字の読めない箇所、 何が言いたいのかよくわからない箇所などがあちこちにあるため、 「大雑把訳」といってもかなり精度が低い大雑把訳になっている可能性も高いので、 利用の際には注意されたし。

なお、参考資料として、WWWでも手軽に参照できる 「血盆経(富山県[立山博物館]所蔵)」の写真 [ 立山信仰と立山曼荼羅の解説 より ] 、 および 「血盆経の刷札資料」のPDFファイル [ 栃木県の石仏資料集 より ] を参照した。これらと比較すると、源正寺のものは あちこち書き足されていたり 呪文(真言)が入っていたりするので 時代はちょっと後になるのかな、という印象を受けた。

 またネット上で閲覧可能な資料としては、 此村庄助(1915(大正4))『血盆経』此村欽英堂 [NDL] 大藏正教血盆經 [CBETA] などがある。注釈文献としては 血盆経和解 [筑波大学図書館] などがネットで閲覧可能 (この8〜9コマに『血盆経』あり)


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大雑把訳

仏説目連正教血盆●経

私はこう聞きました。あるとき仏は鹿野園におられ、 1250人もの弟子たちも一緒でした。

 そのとき目連尊者は羽州追陽県におり、そこで血盆池地獄を見ました。 そこは84000由旬もの大きさで、120もの鉄梁鉄柱鉄枷鉄鎖があるのですが。 見ると南閻浮堤の女人が大勢いて、頭を割られ、髪を散らし、枷をのばし、 手足が傷ついており、地獄にて大苦悩しているのです。 地獄の鬼王は一日三度、縛縄を引いて罪人たちに汚血を飲むよう命じます。 従わない罪人は獄王により鉄棒で叩かれ、叫び声が響き渡ります。 目連は悲しくなって獄王に聞きます。「南閻浮堤の男子が見当たらぬ。 ここで苦しんでいるのは、女人のみ大勢のように見えるが」と。 獄王は答えます。「ここは男子には関係がないのです。女人がお産の時に 出す血が、地面について地神を汚してしまいます。 また汚れた衣服を川で洗うと 水が汚れ、その水を誤って善人が汲んでしまい それで煎じた茶で供養してしまいましたなら。諸聖まで汚れてしまいます。 そこで天大将軍さまが その名前のものが 100年後、命尽きた時に かような苦報を受けるべしと善悪簿に書かせるのです」と。

 目連尊者は神通力をつかって仏や大菩薩たち、天竜八部衆などがおられる場所に やってきます。目連尊者は、自分が目撃したことを 事細かに仏に報告し、 仏に申し上げます。「世尊。どうか教えてくださいませ。自分を育ててくれた 恩ある慈母を、血盆の苦しみからどうやって救出すればよいかを」と。 仏は仰せ。「とてもよい質問だ。その恩に報いたいと願う孝順男女は、 三宝を敬い 長斎(血盆斎)を三年と六十日行い 目連聖号を礼讃せよ。 さらに勝会(血盆勝会)の終わりにはお坊さんにこのお経を展誦してもらい、 呪文を授持せよ。かくなる懺悔をやりとげた日に、般若舩が出現して 奈河江の岸を渡してくれるし、また血盆池の中に五色の蓮華が出現し、 そのとき罪人たちは皆 大喜び。 慚愧心が起これば、すぐに仏国土に登ることができる。 そこでさらに呪文を唱えよ。『なむさんまんた‥(略)‥さばか』」と。

 仏は目連、および菩薩たちに仰せ。 「汝らは、このお経を伝え、人々に さっき述べた教えを いち早く理解させよ。 この教えなくば、千万劫の災難に相当する損失だ。このお経を信じ書写する人の 現在過去未来の母親たちは、亡くなった後、天界に生まれて諸快楽衣食を 意のままに得るだろう。母親が早世した後でも 母のために励むならば、 母は業縁から脱して救われ、浄土に生まれるであろう」と。

 そのとき目連尊者および菩薩天竜八部衆たちは 仏のお言葉を聞き、皆 大喜びしました。そしてこの教えを心に刻みつけ、礼をして退出しました。

この功徳により、女人たちが皆、血盆池から出て安楽国(極楽浄土)に生まれますように。 釈氏沙門證●


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めも

血盆経。この前半に出てくる血盆池地獄が 「血の池地獄」の典拠とされてるやつです。よね? 「佛説大蔵正教血盆経」という題になってるのが普通のようですが、これは 「仏説目連正教血盆●経」と題されています。「盆」と「経」のあいだに 一文字あるのはわかりますが、字がつぶれていることもあり、何というか‥ わかりそうだけど わからない、非常に微妙な感じです。 (たぶん「尊」じゃないかなあ‥とは思ってますけど)

 タイトルに「仏説」とあり、内容も 仏が語られたように書かれていますけど。 これも 「盂蘭盆経」[URL] などと同様、 中国で成立した産地偽装の偽経とされてます。 たしかに「母親への親孝行」というのが前面に出すぎていて、インドというより 中国という感じが、ものすごく します。

 文中に出てくる「奈河江」については、とりあえず 地蔵十王経 [URL]をどうぞ。 また、最後に出てくる「安楽国(極楽浄土)」については、とりあえず かんのんさまは西(西方浄土)に [URL]をどうぞ。




「めも」の分量が増えてきましたので、ページを切り分けました。
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呪文(陀羅尼)について

大雑把訳の後半のところで以下:

そこでさらに呪文を唱えよ。『なむさんまんた‥(略)‥さばか』」と。
このように大雑把訳した箇所があります。この呪文(陀羅尼)の中身、 他のテキストでは見かけないものなので いまいち何を書いてるのかよくわからない。そんな感じでしたけど。 此村庄助(1915(大正4))『血盆経』此村欽英堂 [NDL] の刊本を見ると、本文とは別の 「ふろく」として陀羅尼を紹介してますね! これを右図として紹介しておきます。 見比べてみると 一部漢字が違ったりしてますが、基本的にはこれと同じです。

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[ふろく] 1915年版の解説

  此村庄助(1915(大正4))『血盆経』此村欽英堂 [NDL] の刊本では、その陀羅尼に続けてさらに 以下のように書かれています:

夫女人罪のふかき事数多の諸経論に説せ玉 へり中にも血盆池地獄とて俗にいふ血の池 の地獄は女人ばかり堕るなり貴も賤も一 度女身を受る輩は地神水神を汚しまいらす 罪咎により必ず此地獄におちて一日に三度 血を飲さしめられ並に鉄棒でうたれ苦患を 受る事かぎりなし然ども此経此陀羅尼を信 受し読誦し書写する人は此地獄を免て天上 に生ずと此経又は報恩経等に説せ玉へりさ てこの陀羅尼は下総国相馬郡法性寺住持中 興和尚尼将軍の夢想に依て竜宮界より得た る秘術なり今般この経と共にして印施する なり女人は必ず信受し書写し受持し読誦し て此地獄を免るべしたとひ男子といへども 誰か母なからん共に信受して生たる母姉妹 のために書写し読誦し死たる人のためには 其墓に埋て此地獄を救べし若よみ得ず書ゑ ぬ人は心の懐に納べし其験を得し事支竺乗 にためし多し必ずうたがふことなかるべし

為菩提
圓井家先祖代々
智開院相空常貞大姉  施主 因幡 圓井のぶ

此経談誦の御方へ必ず此諸霊の為め御供養願上候

‥おっ。「この陀羅尼は下総国相馬郡法性寺住持中 興和尚尼将軍の夢想に依て竜宮界より得た る秘術なり」と書いてありますね。誰のことを言いたいのか よくわからないんですけど。でも、とにかく陀羅尼は国産という感じみたいですね。




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