[Table of Contents]はじめに
はじめて見たのは けっこう昔のことになりますけど。
今考えても、あれ以上に「絶頂」を感じる描写って、見たことない気がするよなー。
‥という描写をメモらせてください。
まずは書誌情報から書いておきます。
- 「猟奇天国」, 山上たつひこ『続・喜劇新思想大系』(秋田漫画文庫)
この『喜劇新思想大系』シリーズはその後「完全版」も発売されていますけど、
私が見たのは秋田漫画文庫版ですので そちらを紹介しておきます。
なお、この秋田漫画文庫版の『喜劇新思想大系』シリーズは 巻数の付けかたが
ちょっと普通のマンガとは違っていて、第一巻が『喜劇新思想大系』、
第二巻が『続・喜劇新思想大系』、第三巻が『続々・喜劇新思想大系』‥と、
そんな感じになってます。つまり『続・喜劇新思想大系』はこのシリーズの2巻に
相当します。その pp.155--157 です。
[Table of Contents]あらすじ
まず、物語の「あらすじ」を簡単に紹介します。
開業医である父親の跡をついで外科医になるべく、勉学にはげむ少年がいます。
ただし彼は、自分の血を見るのが何より苦手なんですけど。
でもそれよりも彼には重大な秘密があって、それは、彼には異常ともいえる猟奇趣味があること。
じつは彼は、生きたまま美女の肉体を切り刻むことを夢見ていて、
毎晩のように、人の身体を切り刻む様子を夢想しては興奮しているのでした。
そんな少年が、ある日、人気のない小屋で、一人だけの狂宴を繰り広げている様子を、
たまたま近くを通りかかった主人公が目撃してしまうのです。
この狂宴を見た主人公は、あまりの衝撃に腰を抜かしながら何とか逃げ出すのですが。
その後、ヒロインの めぐみちゃんが突然の腹痛を起こして この少年の父親の病院に入院することとなり、
それを知った少年が「チャンスだ。 ぼくの 夢を 果たすには 絶好の チャンスだ!」‥
‥‥と、そんな感じで物語は進んでいくのですが、物語の展開については ここでは置いておきます。
ここでのポイントは「人気のない小屋で、一人だけの狂宴を繰り広げている」ところです。
いったい、どんな狂宴を繰り広げていたというんでしょうか。
(念のため、ちょっとスペースを)
[Table of Contents]狂宴!
人体を切り刻むことができない少年は、その憂さを晴らすため、小動物に刃を向けていたのでした。
いわゆる動物虐待というやつですね。
一般に動物虐待というのは、ネガティブな感情に基づくものが多い印象が、なんとなく、ありますけど。
この事例の場合、ちょっとそういうものとは違っていて、単純に倒錯的な興奮を満たすため、それゆえ
人間のかわりに‥という感じのようです。
そしておそらくポイントはここからです。切り刻まれた内臓をつかみ、壁に押し付けてビチャビチャしながら、
少年はどんどん興奮のレベルを上げていきます。そのうち自分も裸になって内臓を自分の身体に押しつけ、
内臓まみれの床の上をゴロゴロ転げ回り、少年の興奮もついに絶頂に達します。そして「ずぴっ」‥。
この様子をたまたま見てしまった主人公は、あまりの衝撃に腰を抜かしてしまうわけですけど。
この衝撃の中心は 殺戮だったのか、あるいは猟奇的性欲だったのか。‥‥まあ、たぶん、性欲でしょうね。
[Table of Contents]つぶやき
- なかなかスゴい発想だ、よくこんなこと思いつくなあ‥とも思いますし。これほどの猟奇的な行為を
実にカラッと描ききってしまった山上たつひこ先生はスゴいなあ、と感心します。
「人格異常にもほどがある!」という感じの描写なんですけど、しかし、これを あくまで「少年の異常性欲」
としてのみ描ききったからこそ、これほどの異様な場面なのにカラッとした感じになったんでしょうね。
- でも当時、1970年代というのは、こういう動物虐待的な行為についての世間の反応って、どうだったんでしょうかね。
たぶん「人間じゃないから」ということで比較的許容されていたのではないか、だから本作でこんな堂々と
小動物を切り刻みまくるネタを、単なる少年の異常性欲を描写するためだけの理由で描けたんだろうな、とは
思いましたけど。実際どうだったんでしょうかね。
1990年代後半あたりからはもう完全にアウトですよね、このテの表現は‥。
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