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スマイリーキクチ(2011)『突然、僕は殺人犯にされた』

著 スマイリーキクチ
年 2011
題 突然、僕は殺人犯にされた
発行 竹書房



 いやー。私も2000年頃「スマイリーキクチ氏が殺人事件の犯人」という噂が 立っていたことは知ってました。けどまさか、2009/2 にそれ関連の 書類送検のニュース報道がなされるまで、あの話がずっと10年も続いていたとは 知りませんでした。ビックリしました。 このときは単に「スマイリーキクチ、よく10年ガマンしたなあ、 芸能人てやっぱ人気商売だからなあ‥。それにキクチは決して「売れっ子」じゃないから、 なけなしの人気がさらに落ちそうなことはしたくなかっただろうしなあ‥」なんて 思った程度だったんですけど。

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注意事項

 本ページは スマイリーキクチ(2011)『突然、僕は殺人犯にされた』の あらすじでも、感想でも、書評でもありません。 いつか、ひょっとして何かの話題に出すかもしれない時のための 自分用のメモ・備忘録的なものであり、それゆえ、元の書籍の 文脈を大きく外れたことを書いていたりしますので、誤解なきようお願いします。 (え? そんなものオープンにするなって? ‥いやー。すみません。オープンにしておかないと、 自分で書いたメモの存在さえ忘れてしまうもので。健忘症か?^^;)


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本文

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1. 突然の誹謗中傷

私もある程度知っていた、2000年頃の話。ウソ書かれた削除要請に対し、削除のためには 「事実無根を証明してください」(p.15)って、そりゃムチャだよ‥>某巨大Web掲示板。 ただ、こういう系の削除要請は個別の判断が非常に難しいし、 一部の削除要請だけ特例で認めると収集がつかなくなって、さらに 「あなたは芸能人だから警察が動いてくれたんですか? うちの娘は何回も断られました。 さぞ気分がよいでしょうね」(p.172)などという別種の悪意が生まれる可能性がありますからね。 本書に関しても「本出して金得たんでしょ // まだ被害者ぶってんのかよ」と中傷する人が いるくらいですし(どう考えても本書から10年「ひとごろし」と言われ続ける対価として十分に 感じるほどの収入は得られないと思うのが普通ですけどね)。 ネット上に悪意の種は尽きまじ。

それはともかく、この時期すでに四谷警察署に相談に行ってたんですね。そしてかなり 捜査はされていたものの、結局は捜査打切り‥。 その後、ネット上ではどうやら殺人犯の噂が消えずに流れ続けていたようですけど、 ネット外ではそんな噂のことは(時折ある「殺人犯をテレビに出すな」的な無根拠なクレーム以外) ぜんぜん感じない、そんな日々を送っていたみたいです。

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2. 謎の本

2008年1月、ブログ開設。ゲームの始まり。案の定、ブログのコメント欄炎上。 というか、ある程度の中傷コメントは予想してたと思うんですけど、 まさかそれほど‥という感じだったとは思います。もう完全に典型的な 「弱いもの達が夕暮れ さらに弱いものをたたく」(ザ・ブルーハーツ)というやつですよね。 「ブログの内容と関係のない、ご質問がある方は、ライブ後に直接、聞きに来て下さい」(p.42) →無論、誰も来ない(^o^) キクチ氏からすれば たまったもんではなかったのは明らかですけど。 この、ネットと現実世界の落差というのは何なのか、というのは面白い問題だと思います (というか「匿名」というのがデカいのかな?)。 「恐いのは、嘘を嘘だと見抜けない得体のしれない集団」(p.47)とか、 「人間のクズ」とか、今回の執拗な中傷犯どもを、特別な、頭のおかしいヤツらと してしまうのは良くなくて、たぶん、誰もが無意識のうちにハマってしまう罠なんだと思います。

でもやっぱ不思議なのは「なんで、こんなに『ひとごろし』言うヤツが次から次へと 出てくるの?!」ということですよね。 2010年頃に高校卒業する世代の人における、スマイリーキクチ氏の知名度って (スマイリーキクチ氏には申し訳ないですけど)ほとんどゼロに近い感じのはずで、 それなのに「殺人集団の一味で芸人になったやつ」という中傷だけ 確実に受け継がれているというのは本当に不思議です。 コンクリ殺人事件のインパクトがそれだけ大きかったということなんでしょうか。

とにかく「ひとごろし」の噂を何とかしないと‥ということで、 警視庁「ハイテク犯罪対策総合センター」、中野警察署生活安全課に相談しても「どうせ遊びでしょう。削除依頼して 様子を見ましょう」の繰り返し。警視庁も(当然ながら)門前払い。 ‥まあ、今回のキクチ氏の例はあまりに特別すぎで、 たぶん このテの相談のほとんどはこの程度の対策で収まる話のはずでしょうから、 警察は責められないと思いますけどね。(というか「ブログの炎上」が果たして 「ハイテク」なのかという問題もあって、PCに詳しくない人はブログと聞くと ハイテク課に回すけど、ハイテク課では「そんなトーシローの犯罪、ウチに聞くなよ!」と いう感じだったりするんでしょうか。)

あ。「謎の本」というのは [この本]のことですよね。この本で「あやしい」とされた記述に 関して、北芝氏側は「同書籍の一般読者が、指摘された記載内容から『本件事件』の犯人を 菊池氏であると認識することはないと考えます」(p.111)だそうで、要するに、 「それはスマイリーキクチ氏のことではない」ということですよね。

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3. ひとすじの光明

「インターネットの誹謗中傷でお困りの方。警察の生活安全課はお悩み相談室だと 考えてください。刑事事件にするなら刑事課に行くことをお勧めします。 その時に刑事告訴をしたいと、はっきり意思表示をしてください」(p.84) そして中野警察署の刑事課で「これさ、俺が担当するから」(p.88)‥‥ ここ読んだところで、ちょっとウルッと来て 熱いものがこみ上げてきかけたのはともかく。 今回のキクチ氏の場合は あまりにアレでしたから刑事課に行ったのは適切だとは思いますが。 これで知恵をつけた、第三者的にはたいした被害を受けたわけではなさそうな人たちが 生活安全課とかハイテク課をスルーして直接刑事課に殺到するようになると、 ただでさえ多忙な刑事課がさらに多忙になって検挙率低下につながるのでは?なんて 余計な危惧をしそうになります。生活安全課とかが刑事課の窓口になってくれると いんでしょうけど、実際は厳しいんでしょうね。 刑事課の人に「こんなくだらないヤマ回しやがって、ちっ」とか言われるのは 誰だってイヤですから、よっぽどのことがないと刑事課には話は回さないだろうと いうのが目に見えるようです。

さて。刑事さんの指示により「今後、中傷記事を書いたら刑事告訴する」宣言した のちも中傷が続いたため、いよいよ警察による捜査が始まるわけですけど。 そこから先、警察が絡んでくるあたりの 中傷者たちの反応が興味深いですよね。 実際に警察が電話すると電話口で「二度としません」と反省した態度(p.120)を取った 数時間後には「ヤロー警察に被害届け出したな 早速「中野署まで来い」ってさ、 犯罪犯しというてお回りに通報入れるなんてどこまでクズだよ!? もっとも警察が 掲示板の悪口くらいで動くとは思えないけどなw」(p.121) ‥‥警察から出頭要請が来た直後に「警察掲示板の悪口くらいで動くとは思えない」って、 誰がおまえに電話してきたか忘れたのかもう?‥というのはさておき。 「警告をしてからもやまない中傷、警察から犯罪事実を告げられても、何の躊躇もせずに 平然と誹謗中傷の書き込みをする行為。この事実は、捜査関係者を絶句させた」(p.125) 「何でブログに書き込んだくらいで、警察に捕まるんだ」(p.143) とありますが、おそらく学校の「いじめ」と同じで、「何の躊躇もせずに いじめ続ける」 よりもタチが悪い状況、すなわち 権威ある人が何か言って来たらとりあえずその場はしのいで、あいつチクりやがった、 チクリ被害者である自分はおまえに復讐するぜ、もっとひどくいじめるぜ、 というガキの論理ですよね。 まあ、そのガキの論理は実際はガキだけのもんじゃなくて、大人もだいたいはそういう 論理で行動するというのは、残念ながら皆が知るところではありますが‥。

とりあえずその場はしのいで‥と書きましたけど。 「取調室で涙を流し「謝罪したい」と言った人、「本人に会って謝りたい」と言った人、 O警部補から事情聴取の様子を教えてもらっていたが、すべてがその場しのぎの反省だと わかった」(p.208) 「書類送検された七名は、起訴されたら謝罪を申し出る気だったのか。それは起訴を 取り下げてもらうためだけに謝罪するつもりだったのか。謝罪に来ると信じていた自分が バカに思えた」(p.209; なお実際に謝罪に来た人はゼロだったそうです)‥いや、 それは考えすぎです。とりあえず「謝罪したい」と言えば警察の人たちに 怒られなくて済むと思って言ってみただけですから。たぶん(^_^;

別の犯人女性。 「掲示板のデタラメな書き込みを本気で信じてしまい、 「人殺しが許せなかった」と話し、O警部補がすべて事実無根だと説明すると、 「妊娠中の不安からやった」と供述したらしい」(p.131)

2008年のクリスマスに、タレント飯島愛さんの訃報(本書では、名前は伏せられてますが‥)。 知らなかったですけど、飯島愛さんも同世代、近所の出身ということで コンクリ殺人犯行グループの一味扱いされてたんですね(p.137)。うわー。 そして「飯島愛」で検索かけると「犯行グループ一味の噂」つながりで、 本人どうしはほとんど面識もない二人が「関連キーワード」で結びつけられる‥(p.139)。 今でも「小倉智昭」で検索すると「ヅラ」がサジェストされるという事実があって、 これは(小倉さん本人はイヤで仕方ないとは思いますが) 「サジェストって、デマの情報源としてヤバくね?」なんて話をするときに使うネタの一つに 私はしているんですけど(小倉さんすみません)、さすがに「犯罪者」を暗示させる サジェストはシャレにならないですよね。

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4. 正体判明

摘発された別の女性。 「ネットのデマを本気で信じ込み、「腹が立ってやった」と自供」(p.149) 「警察での取り調べ中、涙を流しながら、「きくち、殺す」は正義感だと主張」(p.150)

摘発された人たちの全体像: 「一人だけ「書き込みは嘘だとは思っていたけど、みんながやってるから、 おもしろくてやった」と供述していたが、それ以外の人物はネットのデタラメな書き込みを 鵜呑みにし、本気で「殺人犯」「強姦の共犯者」と思っていたという」(p.154) 「ほとんどの人が「ネットに洗脳された」「ネットに騙された」「本に騙された」と供述して、 「悪いのは嘘の情報を垂れ流した人だ」と他人に責任をなすりつける」(p.156) 「善悪の見境も限度もわからず、「人殺し」「強姦犯」だと身勝手に思い込んで憎み、 僕を誹謗中傷した。摘発を受けた者の中には事件自体を茶化した者もいる。 とてもじゃないが、ここでは公表できないコメントも多数あった。悪意に満ちたコメントを 投稿して、「あいつがこの文章を読んだら、どんなに恐怖に陥るか」と妄想にひたり、 日頃の鬱憤を晴らしていた」(p.157) ‥うん。キクチ氏が本当に犯人かどうかは実はもうどうでもよくて、 一方的にタコ殴りにできる相手、きっと反撃してこないだろう相手を 見つけたらその相手をもうテッテ的にボコボコに叩いて ストレスを解消する‥。(んで今回の例のように、予想に反して相手が反撃してくると とたんに被害者ヅラする。) Web2.0のダークサイドですよね。 従来は 知り合いにグチってイヤがられるか 一人でブツブツ言ってるだけだったのが、 ネット上でみんなが見てるところで堂々とボコボコ叩けるようになったんですよね。 すばらしい時代だ。

なお報道について。 「新聞、しかもスポーツ新聞でなく「三大新聞」と呼ばれるうちの一つが、 中傷された側、中傷した側から何の裏付けも取らずに、 ネットの曖昧な情報をそのまま紙面に掲載してしまったのか」 「「事実無根の書き込みが繰り返された」以外は、 「しっちゃかめっちゃか」な記事だった。こんな内容で大丈夫なのかと心配になった」(p.164) 「ニュース番組だけでなく、ほかの新聞の夕刊にもこう書いてあった。どうやらこれを 最初に書いた某三大新聞の記事を読み、他社も裏付けを取らずに報道していたようだ」(p.166) ‥ちなみに。新聞記者は個々の事件について いちいち専門家に匹敵するほどの知識を 持っているわけではない、というか基本マスコミはシロウト、「庶民の代表」的な立場しか 取れないですし そういう立場を取ろうとしますから、 事件の内実や背景をよく知ってる人からすると 「なんだこの報道は」と思われるのは必然ですよね。それは仕方ない部分も多いと思います。 専門的で正確な記事は、多くの場合、専門外の人には読むのはツラいものですから‥。

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5. 重圧、そして新たなる敵

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6. スゴロク

警察と検察の温度差というか、担当者の差というべきか。結局は不起訴に。


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つぶやき

  • ある程度は内容を知ってるネタということもあり、イッキに読んでしまいました。
  • サラッと読んでるつもりだったんですが、 O警部補の「これさ、俺が担当するから」(p.88)という台詞を目にしたところで ウルッと来てしまいましたので、思った以上に入り込んで読んでたみたいです。 やっぱ、程度の差はあれど、誰がいつどこで同様の被害にあってもおかしくない、 というか既にそういう被害にあってるかもしれない、そういうネタですからね。 被害者のみならず、加害者についても私としてはどうしても他人事とは思えない話です。
  • ちなみに。この加害者の人たちの心理状態についてですけど。荻上チキさんは マッツァの「漂流理論」でこれと類似の事象を説明しています。 自分の行為を正当化するための理由付け、中和の技術として以下:
    「責任の否定」…自分はある環境に巻き込まれたのであって、自分には責任がない
    「加害の否定」…これは遊びやふざけであるので、たいしたことではない
    「被害の否定」…これは、相手が受けて当然の攻撃であって、相手にこそ責任がある
    「非難者の非難」…こうした行為を非難する者も問題含みであり、非難する資格はない
    「高度の忠誠への訴え」…忠誠を誓うべき秩序や大義が荒らされているのだから、見逃せない
    (萩上・飯田・鈴木(2010)『ダメ情報の見分けかた』NHK出版 生活人新書334. p.56)
    こんな感じで自分の行為を正当化してるんでは? という感じのようです。このうち スマイリー氏の件について、2つめ「加害の否定」はどうかと思いましたけど。 よくよく考えてみると「何でブログに書き込んだくらいで、警察に捕まるんだ」(p.143) というのがまさにそれですね。‥でもこれ、漂流理論というやつで事象の説明はできても、 それが解決策対応策に全然結びつかないですから、かなり厄介な問題ではあります。
  • 「特別付録 ネット中傷被害に遭った場合の対処マニュアル」は有用と思いますが、 すみません。ザックリ読み飛ばしました。

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