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久保田三十三所 (札打)

The 33 Kannons of Kubota (Akita City) and "Fuda-uchi".


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1/16「札打」の基礎知識

「札打ち」についてですが、純粋な小正月の民俗行事ということで、 とくに決まった運営主体がある訳でも、 ご先達のような 引っ張ってくれる人がいる訳でもありません。 毎年1月15日〜16日の日付の変わり目(午前0時)をスタートとして、 巡礼者がそれぞれ勝手に、別段連携することもなく、33番の札所を巡礼して以下:

  • 事前に自作して用意した「札」を各札所の所定の位置 に貼付け(貼付ける場所は、 札所に行けば、わかります。ノリとか画鋲は自分で持参しないと貼れませんので為念)、
  • お堂に、持参した賽銭などをお供えし、
  • 各札所ごとに決められた「ご詠歌」(基本、「西国三十三」と同じです)を唱える
これらの行為(札打ち)を、各自が勝手に、それぞれ、行っていくものです。 (注意。札とかお賽銭などは33セット程度(フルで回ると37枚かな?)用意しないと途中で お供えできなくなる可能性が高いので注意です。ウチは3人で回ったのですが、 各自がそれぞれ賽銭をお供えできるよう、事前に小銭を100枚ほど用意して、 それを3人で33枚に分けて回りました。)

 なので、 人によっては「半分くらいしか回ってないや」という人も、けっこういるはずです。 実際、巡礼の最中には、自分の目の前を走ってる、巡礼者を乗せたマイカーが 次に止まるべき札所を普通にスルーして先に行くのを よく見かけますし‥。 (とくに 24:釈迦堂光明寺 はなんかよくスルーされやすい印象があります。 あのへん、どうしても山王大通り(竿燈大通り)を渡る信号に意識が行っちゃうんでしょうね‥)

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順路

札所情報 は こちら || 札所一覧 は こちら

 巡礼する札所の順番についてです。たぶん問題になるのは8,9,10番札所のあたり。 どう見ても10番が8番と9番の間に位置してます。ここを8,10,9と回るか、 あるいはちゃんと8,9,10と回るべきか‥。ちなみにこれ、元々あった10番札所が 廃寺か何かで消滅したため近場の玄心寺が10番札所を引継いだという感じのようで、 ですから「もともと10番札所はあの場所ではなかった」、だから無理に8,9,10と 回っても それは「久保田三十三」を創設した人が想定した順路とは違っているわけです。 それを考えると、無理に8,9,10と回る必要はないかな、と。

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日時

 巡礼の日時についても、基本「16日」ということですから、 べつに日付の変わり目スタートじゃなくても、16日の朝から回りだしても、 遅くないとは思います。あまり遅くなると、札を貼付ける「所定の場所」が 撤去されてしまう可能性があり、たぶんそれが一番問題になるかもしれませんが、 16日の午前中ならたぶん大丈夫ではないかと‥。(いまいち自信ないですが。 でも徒歩巡礼の人だと、日付変わる頃にスタートしても昼頃まで巡礼してても おかしくないですよね。 1926(大正15)年1月の札打 [URL]だと、 26:当福寺の午前7時はかなりの人出だったようですし、 年代不明です [URL]けど 「金足では朝の二時から起きて‥(略)‥家にもどるのは翌朝」ということも あったようですし(一泊二日?)。 ですから、たぶん午前中の撤去はないのでは?と。)

 ただ、16日朝になるともう「うわー、意外と人いるなあ」という 民俗行事的なノリが味わえなくなっているということ。そして、 小正月におこなう先祖祭系の行事は夜中にやるのが基本のはずなので、 その時間帯を外してしまうのは、ちょっと どうよ? と思ってしまうあたりが弱点ですかね。 (小正月の行事って、夜中にやるため15日とか16日に設定されてるんですよね。 旧暦では15日16日というのは満月の日(いわゆる「十五夜」)なので、夜中の行事がやりやすいですから‥)

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 上でも書きましたが、札は自作します。テキトーに木札か紙札を用意して、そこに 亡くなった身内の戒名を記入するのが基本です。 木札を用意してクギで打ち付ける‥というのが本来的のはずですが、それはかなり少数派に なっています。私は、右に示したような感じの 「フリーカットラベル」とかいうやつを近場の電器屋で購入して、それに こんな自作のテンプレート(PDF)を 印刷し、戒名を記入して、紙札をハサミで切りはなして使用しました。 何で「ラベル」を使用したかといえば、これがシール状になっていて、 札を貼りやすいと判断したからです。札への文字の書き込みは、すべて筆ペンで、手書きで 行いました。 (「戒名だけは手書き」というのは私にとっては譲れない線だったんですけど、 家族からは猛反対され、仕方がないので大部分の札を私一人で書くことに‥)

 一般に、 観音札所巡礼においては札の中央に「奉巡礼南無大慈大悲観世音菩薩摩訶薩」のような 文言を書くのが普通ですが、この久保田三十三所の「札打ち」においては、 そのような文言は 基本的には 書きません。では何を書くかといえば、 亡くなった親近者の戒名です。 縦長の札に タテ書きで「○○○○居士」とか、 院号つきの場合は「○○院○○○○大姉」という感じの戒名だけ書くのが基本です。 近年に亡くなった親近者が複数いるのでしょうか、複数の戒名を併記した札も よく見かけます。

 札を作る際には、なるべく小さいサイズにした方がいいです。札貼りスペースが限られていますので、 札のサイズが大きいと 札を貼るスペースが確保できなくて困ることがあります。 とくに 21:普伝寺。ここでは5札所分、札を5枚貼るのが普通なんですけど、 札貼り用のスペースは他の札所と同じくらいの面積しかないですので、 我々も、周囲の人たちも、札貼りスペースの確保に四苦八苦する様子をよく目にします。

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ご詠歌

 それと初心者の人が面食らうのが「ご詠歌」だと思います。 これ、どうやら歴史的には17世紀あたりに作られたらしい五七五七七の和歌なんですけど、 札所ごとに和歌が決まっていて、札を貼付けた後にそれを唱えます。 まあ、読経の替わりということなんでしょう。

[「ご詠歌」のみの一覧は、こちら] (当日・現地の人向け)

 ご詠歌については、それぞれの札所に行けば ご詠歌の内容が掲示されていますので、 それを見ながら唱えればよいのですが。でも札所によっては 字が小さい・達筆すぎる・ 夜だから暗い‥などの理由で、せっかくの掲示がよく読めないこともあります。 そんな時のため、手元にペラペラの「ハンドブック」があると便利です。この「ハンドブック」、 運がいいと1番札所あたりで どなたかが寄贈したものを いただけることもあります。 でも確実に欲しい‥という時は、いちおう、私が実際に目撃したところでは、 秋田市大町の「佛壇の升谷」で100円で売ってました(2010年頃)。 たぶん他の仏具屋でも、ある店にはあるんじゃないかと思います。 ご詠歌の節回しについては、我が家に伝わっていた古いカセットテープによれば [こんな感じ (MP3)] です。

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防寒

防寒対策は重要です。1月16日未明は、やっぱ、ムチャクチャ寒いパターンが多いです。 クルマで回る人が多いと思うんですけど、クルマで回ると身体が暖まらないですし、 頼りになりそうなクルマの暖房も、クルマの乗降が頻繁すぎて車内が暖まる時間がないと 思います。そうすると特に太腿のへんが冷えてきて、つらくなります。 タイツとかズボン下とか、その手の下着を多めに着用するようにしましょう。

 あと各札所で札を貼るとき手袋をはずすパターンが多いと思うんですけど、 それを続けていると手の指先も冷えてきて しんどくなってきます。 個人的には、分厚い手袋よりも逆に、薄い手袋か、指先を切ってある手袋のほうが いいんじゃないかと思います。何故かといえば、それらの手袋は 手袋を取らず、手袋をしたまま札貼りなどの作業ができるからです。 逆にそっちの方が指先が冷えにくいです。「でも薄手の手袋だと不安だなあ‥」という場合、 手首用のカイロも良さげです(右を参照)。

 ということで、太腿と指先。これが防寒のポイントだと思います。

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札打ち on SNS

2018年1月、ちょっと気が向いたので札打ち関連の Tweet を検索してみました。 ハッシュタグ「#札打ち」が使われている関連の tweets が、なんと! ‥‥ 5個!! ちょっと寂しいですね(まあ会場が暗すぎて写真もロクに撮れないから「インスタ映え」も 難しすぎますからね‥)。次世代への伝統継承がやっぱ課題ですかね。

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